2005年11月18日

ミサイル防衛の欧州配備

 ハワイ沖で米国のイージス艦Lake Erieが初めてミサイルから分離後の弾頭を撃墜することに成功したと報じられている。(参照)重要な進展だが、米国内では多くのステップの一つに過ぎないと考えられているのか扱いは大きくないようだ。むしろ欧州配備に向けたニュースに関心が集まっているようだ。(参照2)今日は軽く触れておきたい。

 欧州に対する攻撃の防衛のため、ポーランドにミサイル防衛のための基地を設け、主として中東やアフリカからの攻撃を防ぐことが検討されているらしい。大陸間弾道弾に近い中距離ミサイルが主なターゲットと見られるが、もう少し短距離のミサイルについてはイタリアやスペインも想定にあるようだ。
 ミサイル防衛は抑止のための核兵器とは違い、防御のみであり、しかも100%の防御にはならないので役に立たないという意見がある。以前のエントリでも述べたが、これは議論する観点がずれており意味が無い。抑止は核兵器で取るにしても、抑止不可能な相手がミサイルを持つ可能性はあり、とにかく何がしかの防御の手立てが必要ということだ。この抑止不可能な地域の代表が中東であり、その意味で本命と言えるかもしれない。また近年の中国の国内的混乱を見ても、以前に述べた政治的効果というのも思った以上に意味があるかもしれない。

 ミサイル防衛の技術は日本の寄与も大きい。少なくとも海上配備型は地中海に展開する米国のイージス艦で使用される。話をする相手が米国だけならともかく、例えばオーストラリアから何がしかの支援の要請があったとき日本はどう反応するのだろうか。この種の技術や装備を有している国が世界に数あるわけでも無い。国内の集団的自衛権の議論を見ていると相も変わらず浮世離れしているが、そういう事も含めて考えなければいけないだろう。
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2005年11月09日

フランスの暴動に関する個人的な覚え書き

 フランスの暴動に関しては、ほどなく収まるといいなという希望的観測もあって軽い扱いにしていたが、やはりこの件はひっかかるので自分がこの時に何を思ったか備忘録も兼ねてエントリにしておきたい。今回の事件の構図だが、大雑把に捉えるとこうではないかと考えている。
 まず、移民一世は自らの行動に自覚的で、それなりにフランス社会との調和を目指していたと思う。これは旧植民地の北アフリカ諸国が多いことからも推察できる。そしてフランス社会はこういう層をターゲットとして社会制度の最適化を図ってきた。しかし、二世となると話は別となる。この変化への対応が甘かったというのが問題なのだろう。

 これは在日朝鮮人の問題に比較すると興味深い。日本の場合は、朝鮮との絶対的な文化距離はやはりそれなりには近かったということ、そして人種的に近縁で外見上の区別はつきにくい事が大きい。日本語に堪能で外見上の区別がつかなければ表面上の摩擦は少ない。フランスの場合は本質的に文化主義的で、例えばフランス語ペラペラな黒人への風当たりはそれほど強くも無い。しかし他地域の慣習を持ち込もうとする部分に反発する。この付近は日本も近いところがあるかもしれない。そして北アフリカ出身の移民二世はそれなりの文化慣習を親の世代から引き継いではいるが、フランス社会でそれを韜晦する事に関しては(絶対年齢が若いということもあり)未熟だったということだろう。にもかかわらず、社会に対する要求水準としては、親の世代とは変化して他のフランス人と大差なくなっているだろう。日本においても在日朝鮮人の外見が日本人と明らかに区別がつくものであれば、周囲の人間が注意を払うことで水面下にあった問題が顕在化し、今回のフランスのような問題が発生したかもしれない。

 今回の問題、米国から見れば、バグダッドと比較するような煽り報道を除けば気楽に見えるのだろう。ちょっとした暴動ですぐ死者が出る米国社会に比べれば可愛いものだと。しかし、米国には悪いが、それぞれの社会の様相で基準は変わってくる。フランスにとってはやはり大問題だろう。米国のアフリカ系黒人は出身母体との文化的紐帯をほとんど持っておらず、その意味で「純然たるアメリカ人」だ。国家への不満は大きいが忠誠はむしろ強いかもしれない人々である。フランスの場合は国家の文化的統合の危機としての認識だ(むしろ暴動当事者の思惑が二の次と言えるかもしれない)全く違う種類の問題を並べて議論している印象がある。そしてフランス人に取って見れば、文化的一体感こそが命だ。

 またこれは私が断片的な報道に接した印象でしかないが、英米であれば、サルコジ内務相の政治的評価はそれほど下がらないと思う。そしてド・ヴィルバン首相はむしろ問題から逃避したと見なされて評価を落とすような気がする。ただ、フランス国内的には様々な要素が絡んでいるので何とも言えない。
 フランスで今後問題となるのは、被害の大きさそれ自体より社会の意識の変化だろう。もう少し補足すると、政治の場での力学の変化だ。誰もが百も承知でいたが言い辛かった事がいささか言えるようになるのだろう。その結果がどうなるかに関しては何とも言えない。ただあの国は、英米と並んで国民はそれなりに骨のある国だ。どういう具合に世界に対して「いい格好」をするか、見守りたいと思う。何だかんだといいながら、私はあの国が好きだから。自国のように欠点も含めてとまでは言い切れないが。
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2005年10月22日

プーチン訪日で日露関係は前進するか

 プーチン大統領の来日が11月に予定されている。領土問題の進展に関心が集まっているが、普通に考えると困難だろう。しかしながら、ここ最近は今までなかったような微妙な反応が出てきているので取り上げてみたい。
 この領土問題そのものに関しては、以前にエントリを上げている(参照)のでそちらも参照して欲しい。本質的には主権の問題というのがポイントである。これは実のところ日露双方とも立場は全く同じで、いずれも多少の経済的な負担をしても主権を維持したいと考えている。そのため本質的な対立があり、なかなか進展しないのだ。

 その認識の前提に立てば、ロシア側から出てくる意見は首尾一貫している。例えばプーチン大統領の意見は何度も報道されているが、一貫して主権に関しては譲らないし、現地への投資を行っても立場を強化しようとの意図だ。資源などをネタに、政治経済各方面での見返りで日本に譲歩を促すとのやり方は、実際伝統的に日本側が模索している考え方と同様だ。最近ロシアの研究機関の提言として報道されている内容も、それよりは大胆ながら考え方としては同じだ(参照)。択捉・国後では経済活動を認める一方、主権の問題としては50年間凍結するとしている。主権が問題なのだからそれは解決とはならないのだが。いずれにせよ日露の立場は近い。両国は政治文化の土壌も似ているのかもしれない。欧米文化に対する距離の取り方などは特に該当するところだろうか。

 また日本として頭に置いておいたほうがいい事として、欧州の伝統的な立場の微妙な変化である。欧州議会の決議に関しては以前のエントリでも扱った(参照)以前サミットで日本が北方領土問題を取り扱い、欧州から冷淡な扱いを受けたことは覚えている人も多いだろう。その時点から変化した事は何かと言えば、東欧圏へのEU・NATOの拡大である。今回も領土問題が政府の公式な見解として継続しているエストニアやラトビアの意向があるのは間違いないと私自身は思っている。独力で力関係上不利な小国がこの種の組織を活用するのは常套手段だ。もちろん日本に協力を求めることもあるだろう。ただ、この付近は日本側とすれば判断するべき重要なポイントになる。

 ロシア側の伝統的な立場を考えると、第二次世界大戦での結果を見直したくないというのは絶対条件に近い。現実の国境線がどのくらい変わるかというのが問題ではなく、政治的に大きな環境変化であると見なされてしまう妥協が出来ないということだ。もちろん、過去を振り返ればいろいろな問題が出てくる東欧や中央アジア方面の問題が主軸となる。この点で、北方領土の二島返還は日ソ共同宣言もあることでもあり、従来の環境の微調整で処理可能なのだろう。しかし択捉・国後はそうではない。ともかく日本側も宣伝し過ぎた。二島返還を目指すのであれば問題の国際化は有効だが、四島返還を目指すのであればむしろ問題の矮小化が必要であった。この件は現在の日本政界では理解されていそうであるが、勿論手遅れである。中国はこの矮小化に成功して領土問題を解決できたと私は考えている。

 それ故、日本が東欧の国境問題に対応するときには決意を固めなくてはならない。手遅れながらも問題の矮小化により、ロシアの他の国境問題に波及しないような路線を選択するのか、あるいは欧州とも連携し、アメリカのヤルタ体制批判メッセージとも合わせ、やや大規模な見直しをロシアに求めつつ進めるのか、どちらの路線を選択するのかという事を。どちらで対応するかによってシナリオは全く違う。この事を頭に置き、いずれかで首尾一貫しないとまとまる交渉もまとまらないだろう。
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2005年10月03日

欧州における宗教の取り扱われ方

 首相の靖国参拝問題で政教分離の原則がまた話題になっている。裁判の内容に関する議論は色々あれど、全般として政教分離の原則を厳しく判定したという事実ではある。世界的に見ても日本はこの付近の厳格さが比較的受け入れられる傾向があるようだ。

 欧米諸国で、日本以上にこの種の政教分離へのこだわりが強い国となるとフランスだろうか。この国は人種差別は少ないかもしれないが文化差別は強く、その意味では日本との共通点も多い。母国語がペラペラな黒人に対しては両国とも比較的対応が温かいだろう。イギリスとなると、異質なものを抱え込んで割と平然としているという印象がある。その付近の図太さは万事に完全主義の日本人に真似をしにくいかもしれない。欧州の事情ということで、比較的リベラルな立場からのル・モンドの記事があり、なかなか参考になる。日本はというと、独伊あたりの比較的保守層が近いと言えるかもしれない。ただ日本は宗教が持つ倫理的な縛りの部分を儒教の伝統が補っており、死生観などの方に宗教の役割が集中している。そのためややフランス的な感覚も受容される余地があるのだが、この付近は欧米人にちゃんと説明してもなかなか理解されない事ではある。

 フランスがこのような文化状況になったのは、やはりユグノー戦争のせいと言えるだろうか。概して内戦はその国の歴史的記憶に大きな傷を残すが、今日先進国といわれる国の中では、米国の南北戦争に次ぐくらいの影響が残っているのかもしれない。期間も長いし犠牲者数も多い。これが16世紀後半であるから、思えば日本の発展段階は遅いというほどでもなかった。後にこれまた悲惨な三十年戦争が発生するが、そもそも統一国家の成立時期が遅いドイツではまた違った記憶となったのかもしれない。対外戦争の延長でドイツは被害者的に考えたのだろうか。むしろ19世紀後半から20世紀前半のドイツ人の屈折の原点かもしれない。

 欧州では民族とか人種という表現をすると一直線に宗教に結び付く傾向がある。昔から日本はこの付近の感覚がないせいでコミュニケーションに失敗している。ナチスドイツがユダヤ人をどう定義したかというとそれは宗教である。日本人は自分達だけ黄色人種と屈折しているが、欧州内での違いが無視できるほど小さいわけでもない。他国とは多少外見で距離がある、程度に構えて平然としていれば良いだろう。この日本人の屈折は昔からのものなので根が深いのだが、例えば国際連盟創設時の人種差別撤廃提案などでの失敗などがそれを象徴する。当然欧州ではその多くを宗教と捉えたわけで、第一次世界大戦の発生経緯を考えるだけでも簡単に通るわけがない。この種のギャップがそれなりに政治のレベルで解消されたのは驚くほど最近の事だろう。もちろん日本のマスコミや世論のレベルではまだまだであるが。
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2005年09月19日

ドイツ総選挙の結果に思う

 インターネットの普及に伴い、通常の先進国の選挙は一勢力の一方的な勝利を嫌う有権者の行動により接戦になるという説がある。そして逆に僅かでも明確な差がはっきり見えている場合はそれが増幅されるという説もある。
 果たしてそれが正しいかどうかは分からないが、日独の選挙は余りにも対照的な結果となった。ドイツの政治はいささかの漂流を余儀なくされるかもしれない。 ドイツに関しては良いブログがあり、有名なので私が今さら紹介するまでもないがリンクさせていただく。知的でかつドイツに関する温かい視線に満ちた良心的なブログと感じた。

 さて、様々な指摘が既に多方面からなされており、私が記すまでも無いが、所感も含めて日独の選挙に思ったことを述べてみたい。

・安全保障環境の違い
 言うまでも無く、日本は北朝鮮や中国の問題を抱えている。日本の野党の民主党の主張は稚拙すぎた。加えて経済的にも、日本では対中競合感が強いが、欧州に関してはチャンスでもあり(繊維摩擦とかはあるが)結果的に選挙の争点になっていない。日本では水面下ではなっていると言えるだろう。

・福祉や所得再配分による受益者の問題
 日本は思われている以上に実態は小さな政府といえる。少なくとも欧州諸国と比較すればそうだろう。しかしドイツは移民や失業者がかなりの既得権益と化している。そして受益者の絶対数が多い。日本はとなると、これは所属セクタの違いというよりむしろ世代間の問題だ。若年世代の賃金と雇用を犠牲にする形で50代の所得を維持している。従って少なくとも若年世代に新保守主義の支持が多いのは当然なのだが、奇妙なことに現在受益者のはずの50代・年金世代にその自覚が薄く、むしろ被害者のように自己認識している。この結果改革期待は擬似的なバブル状態になっている。

・地域共同体の問題
 EUによる経済統合効果のメリットが、中枢の先進国で薄れ、相対的な途上地域に集中し始めている。フォルクスワーゲンなどの各地域への工場移転などを思うと分かりやすい。新保守主義的な改革による痛みを伴う努力は、その成果がドイツではなく周辺諸国に拡散してしまうという認識があるだろう。少なくとも日本は、努力の結果が日本人自身に戻ると考えている。これは日本が様々なレベルの製造業を高レベルで維持しようと考える傾向が大きいのと比較して、既に欧州では分業が進んでいるという事情もある。(その観点で言うと、努力するなら全ての国という事で、中長期的には政治統合が合理的な方向というコンセンサスが確立する可能性がある。もちろん、現在の受益国がそう認識してからの話だ)

 全般として思うのは、良くも悪くも日本は単独の国民国家として行動し他者と相対しているのと比較して、ドイツは境界が曖昧になってしまったが故に漂流してしまったのではないかという事だ。危機に立ち向かうには結束が必要である。しかしドイツは、結束するのは、あるいはしてくれるのは、どの範囲かということにすら疑念を感じているのかもしれない。だがこれでドイツの将来が暗いというわけではないだろう。人間は追い込まれない限り覚悟を決めないし、ギリギリまで逃げようとするものだ。近年の日本もそうだったように。ドイツが覚悟を決めるのにはまだ数回の選挙が必要なのだろう。願わくば、日本が恐らくギリギリで回避したと思われる排外主義の罠に、ドイツが陥らないようにと祈るばかりだ。
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2005年07月19日

欧州議会の北方領土問題に対する反応

 欧州議会が、ロシアに日本への北方領土返還を勧告する決議を出したと話題になっている。個人的には欧州のこの反応はかなり意外だった。というのは、以前サミットで冷淡極まりない対応を受けていたからだ。以前のエントリにも多少関係することを書いたので、興味ある方は参照して欲しい。
 決議の内容自体はこのようなものらしい。アジア地域全般に関しての安全保障問題を憂慮し、解決を促す内容だ。これ自体は理念的なものに過ぎない。しかし、尖閣諸島などの抽象的な記述に対して、この問題で返還を明確に記述しているのは面白い。もちろん日本にとっては追い風としても、これは日本向けというよりロシア向けメッセージではないか。
 欧州議会の勢力図はこの通りである。(参照)保守政党がトップではあるが、全般として革新系が強い印象がある。冷戦後の欧州のリベラルな安全保障観がロシアに関するネガティブな反応を引き起こしたのかもしれない。ただ領土問題でもめているバルト諸国あたりの嫌がらせと見れなくも無い。(当然欧州議会には席を占めている。そして欧州議会の特質として小国への議席配分は多めだ)日本の北方領土問題が解決すればラトビアだって、という流れを狙っているのかもしれない。ただ欧州においては、関係諸国ならずとも対露ということになればこの種の決議を出す政治的な下地はあるように思われる。いずれにせよ最近のプーチン大統領の外交上の政治的失点は大きい。今後この種の現象はしばしば発生するかもしれない。
 そしてロシアの反応も面白い。実はロシアにとっては(軍事力とはあまり関係なく)欧州各国の政治的なスタンスはかなり影響力が大きい。日本に対してアメリカの影響が大きいのと少し似ている感もある。反発しながらも文化的な浸透力はかなりあるのだ。案の定こちらのブログによるとこんなメッセージを出しているらしい。彼らは、「欧州がこんなメッセージを出したからには日本は政治的正当性が大きく強化されたと大喜びだろう」と思っているのだ。しかし日本の反応はいかにも鈍い。ここで「平和を望む欧州市民代表の決議に敬意を表する。現在該当の領土に在住しているロシア人には、日本が○○法でかねてから示しているように人道的な対応を行う。この問題は民主主義国同士の成熟した政治により平和的に解決される」とでもコメントして欲しいものだ。もちろん日本は、こういうチャンスを生かすための領土返還時に適用する立法をまだ行ってはいない。
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2005年05月31日

フランスの欧州憲法批准否決に思う

 フランスで欧州憲法批准が否決された。半ば予想されていた事とは言え欧州は大騒ぎである。とはいえ民意との乖離が大きくなってきていた昨今、少し前の日本の永田町だけの大騒ぎ的なシニカルな見方も出来るかもしれない。
 私が短期的な政治イベントに余り興味が無いせいもあるが、これ自体はとりわけどうという物でも無いと思っている。このEU統合プロセス、経済面の統合から始まり、政治面にも波及させる予定ではあるが、本質的にはやはり経済の側面、悪く言うと「食っていくための便法」であったことをもう少し冷静に考えなければならないだろう。ポーランドとウクライナの国境問題で悶着があった経緯だけでも、いつ何で躓くかは分からないにしてもどこかで停滞の時期があるという現実を予想するのは難しくは無かった。
 マクロ的に見ると本当にミもフタも無くなるので言うのも嫌なのだが、結局域内の相対的途上地域が人口比で一定以下の割合で、所得再分配のマイナスより潜在的成長余地による投資のプラスが大局的に見て上回るという判断が可能かどうかによるのではないか。そしてキリスト教の絆云々はレトリックに近いだろう。私に言わせれば中国の言う「同文同種」といい勝負ではないか。どっちかというと近親憎悪や同一宗教の派閥間のほうが始末に困るのが歴史の真実なのだから。トルコを排斥するような世論はバルカンあたりを本格的に叩き辛いある種の代償行為とは見れないだろうか。ちょっと言葉にはしにくいが、今回フランスが典型であるように貴族社会の残滓から来るような文化主義的な問題かと思う。
 とはいうものの、政治統合自体は長期で見れば進むと思う。少なくとも内政的には中央政府の権限が弱い連邦国家に近くはなるだろう。ただそれにはとても長い時間がかかるだろう。半世紀経過しても進むのは進んだが大した進歩ではなかったというオチかもしれない。それにこの種の地方分権が進んだ国をモデルにして考えた場合、中央政府のやるべき筆頭級の仕事は内政よりむしろ外交や安全保障である。現在の米国が典型であるが。そしてそんなものの統合はどうしたら進むのだろうか。19世紀的感覚なら一緒に固い同盟を結んで戦争することだろうが今はそうも行かない。むしろ、何か突発的なアクシデントの結果で瓦解するなり一気に統合が進むなりという結果のほうがありそうだ。それが何かは本当に分からないなとつくづく思う。
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2005年05月19日

ロシアとの領土問題を考える

 ヤルタ会談の再評価でロシア問題が騒がしい。予想通り北方領土問題への影響が論じられている。日本のマスコミの視野の狭さは相変わらずでうんざりではあるが、だがその一方で、世界の政治情勢は米国と欧州正面で論ぜられている思想が周辺に影響する形で決まっていくのだなという相変わらずの事実を実感するものではある。
 ここで日露間の領土問題に関して少し述べてみたい。これ以降の私の文書は日本人としては冷淡に過ぎるのではないかとの批判の向きもあるとは思うが、その理由も一部交えつつ記すので総合的に考えていただけると幸いである。少しきちんとした形で書きたい思いもあるが、手を入れると切りがないのでこのような形で記載する。長くなるので別画面にする。続きを読む
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2005年05月14日

ロシア民主化後退への懸念

 最近、ロシア政治が専制的な体制に戻りつつあると言われる。その中でこのニュースを知ったのがつい先ほどのこと。たまたまチェックから漏れていたのだが、これはまずいなと直感的に感じた。(参照)ロシア下院を完全比例代表で選ぶというものである。少しばかりショックで、まだあまりニュースを追ってないがともかく所感を。
 議会政治は民主主義の命である。そして比例代表制度は単独で運用するとろくな事が無い。ナチスが有名だが、現在でも多くの途上国で独裁追従になったりする。要は、議員が有権者ではなく、名簿を決定する党の執行部の方を向くことになるからだ。この弊害のため、欧州各国でも運用に工夫を凝らしている。例えばスウェーデンでは名簿が公開され、自分の望む候補者に○を付け、一定以上の票数だと当選する、という具合だ。
 日本国内で考えてみよう。比例代表を主張する政党は党の執行部が権威的ではないだろうか?そして政治的に骨太な、芯のある政治家は小選挙区で強い基盤を持っていないだろうか?ただ多様な主張が国会の場に出てくるという意味で、少数政党が少しはあっても良いという事もあり、その意味で日本では比例代表を少な目の議席配分で加味するのは適切だ。米国など比例代表が無い国は地方政府が強力で多様な存在なのがそれを補っているという事かもしれない。日本の選挙制度は批判も多いが、大局的に見れば現在の制度は適切で、細かな部分で激しく論争されていると考えるべきだろう。なお中選挙区が駄目だったのは間違いない。実際に選挙制度改革後、日本の国会議員の質は大幅に向上している。マスコミ報道等では自覚はされにくいが、後年転換点とは認識されるだろう。もちろん不況の厳しさによる政治状況の変化もあるが。

 そしてロシアの場合、その多様性を確保する地方の知事が任命制になった。これも致命的だが、百歩譲って安定性確保のためと言えなくも無い。しかしこの議会制度の変更は折り返し不可能点に到達する可能性もありそうだ。不幸なことに今原油高で、ある側面では経済は好調だ。しかし一次産品に頼る国が国際市場価格の変動でどうなるかは言うまでも無い。一度政治状況が不安定になり、そこで議会が硬直的ではどうにもならない。
 個人的には、プーチンが当面社会の安定を目指し、次の大統領でどうなるか次第かと思っていた。しかしどうも事態はそこまでのんびりしていないようだ。米国では、マケイン上院議員あたりを中心にG8からの追放が主張されている。中国よりこっちのほうが世界的に見て不確定要素が強いかもしれない。
posted by カワセミ at 23:59| Comment(8) | TrackBack(2) | カナダ・欧州・ロシア