この問題に関しては、元より期待できない日本はともかく、米国でのマスコミの扱いもやや薄いように思われる。欧州諸国はやや取り上げていて、歴史的にこの地域に関与がある英国などでは、例えばBBCなどが忘れ去られないように報道を継続しているような印象がある。この報道では内戦に苦しむ国・地域の現状が示す典型のいくつがが示されているように思う。
今回、スリランカ空軍が民間人を攻撃して犠牲者が発生した事件が問題となっている。(参照3)状況は日本人に理解しにくいが、少し前の同じくBBCの記事を読むと、この状況の背景が分かりやすいであろう。(参照4)一部引用する。
Some youngsters have been operating secretly and calling themselves the "people's force". They claim to operate independently but many suspect they have strong connections with the LTTE.
Members of this group suddenly pop up, carry out attacks on security forces and dissolve into the local population. This endangers the public because we bear the full brunt of any retaliation.
I am relieved to hear about peace talks. But it is not unusual in Sri Lankan politics to sign a peace deal on the one hand and authorise military activities on the other.
この文章から、例えばイラクなどの現状を連想するのは難しくない。和平会談にはとにかく双方に当事者能力があり、かつ合意を遵守するという前提が必要である。ただ、構成員への規律は相当厳しくないと、民主主義国の軍隊でも虐待事件のような事は発生する。ましてこの種の内戦の当事者がどうであるかは議論の余地も無い。結果的にタミル人はLTTEの支配区域に集まるというような力学が発生する。
1983年以降の、この内戦での犠牲者はおよそ65,000人と見なされている。人口がおよそ2千万人の国で一年あたり約3,000人の犠牲者という数字は決して少ないものではない。しかしこのような地域は世界にいくつもある。大きな力が外部から加わらないと、状況が固定化され悲劇が常態化するのであろう。その観点からすると、まずは分離を目指している向きのあるイスラエルの政策もそうそう非難できない。イラクで国家を分割できない理由にもなっている。単純に各地域で民族浄化が深刻化するだけだからだ。
日本を含めた多くの民主主義国は、主権を預ける国家の単位が極めて大きいという状況に慣れ過ぎてしまったのかもしれない。中東でも比較的人口の少ない国がうまく統治している傾向がある。例えば欧州だと、中世〜近世のドイツ地域のように、公国レベルの単位で地域の統治が成立し、その後で統合の機運が高まり、国民国家が成立したという過程を経た地域がある。このような経緯を経るべきであった地域は世界に数多くあるのだが、多くの統合されない人々を抱えたまま、主権国家として成立すると問題を解決するのは難しくなる。主権国家システムがどちらかというと欧州的な文脈から発生していて、米国はむしろ主権に関する考え方は先進国としても特殊な部類であることを思えば、より文化的に距離が遠い国との相性が良くない事は推察できる。だからといって容易に解決策がないのも事実なのだが。せめて地方の部族的な統治単位を議会化するとか、軍事勢力を啓蒙的な組織として活用するというのが現実的なのであろうか。