2007年06月26日

論壇系雑誌からの推奨記事(2007.6)

 最近は雑誌で比較的良いと思った記事に巡り合うことが多かった。紹介しようとして手がついてなかったが、次号が発売される前に書き記しておく。

・論座
 この雑誌は最近面白い。朝日新聞社発行ということで全般としては左派的な論調が目立つのは変わらない。ただ強固な編集方針があるというわけでもなさそうで、個別にはかなり毛色の違うものが掲載されている。場合によっては全く相反する論が掲載されているくらいだ。もっともForeign Affairsの掲載自体がそもそもそうであったのだが。この7月号から2本を簡単に紹介。

「シリーズ 中国アップデート 3 郎咸平」
 香港中文大教授である郎氏にインタビューするという形で中国経済に関して述べている。中国が吸収したのはその多くが儲からない製造業で、安価な労働力と高い技術を結び付けようとする外資は、その多くがうまくいっていないとしている。問題は企業の考え方そのものであり、日本企業にも苦言を呈している。中国の物権法にも触れており、考えかたは良いが執行に問題があり悲観的に見ているようだ。官僚機構、司法制度など、中国の問題の大半は腐敗であるとしており、中国のみならず世界の主要企業にとってもこれがなくなることは利益になるであろうと述べている。

「国連分担金削減交渉の舞台裏」
 国連次席大使の神余隆博氏が寄稿している。昨年日本は分担金の削減交渉の結果19.468%から16.624%に低下し、米国以外の常任理事国P4の合計16.810%も下回った。この交渉経過が非常に興味深く記されている。争点はGNI(国民総所得)の統計で平均を取る「基礎期間」の長さ、常任理事国の最低分担率(Pフロア)と「日本が考え出した」低所得国でもそのGNI総額が大きい国は割引率を圧縮する複数割引係数提案、分担率上限(米国を念頭)を決めるシーリングが絡みあうものであったとしている。
 そして日本が譲れないのは基礎期間の部分で、この部分で異なるEUの案と日本案が対立、両者の争いが主要な軸となった。結局中国+G77の途上国グループは結束を保持したまま協力させることに成功し、シーリングで米国の不興も買ったEU案が孤立する経緯が記されている。結果として基礎期間以外の要素は捨て駒として使ったわけである。筆者は問題が色々残されていると謙遜しているが、ゼロサムゲームの外交で日本がこれだけの手腕を見せた例はあまりないように思われる。文章にも力があるのか非常に面白い読み物にもなっている。
 その一方で、例えば人権理事会などで日本とEUはかなり固く結束して行動しているわけであり、この例に漏れないがつくづくお金の話は別だなと思う。

・中央公論
 相変わらず手堅い記事が多い。これも7月号から。

「米国保守派、苦悩の時代へ」
 津田塾大教授の中山俊宏氏の寄稿。米国保守派の状況、レーガンのように分裂し対立してきた多くの保守派を糾合できる人物が今ほど望まれている時期はないと米国保守派の状況を解説。一方でイラク戦争はベトナム戦争時と同様、むしろ現実に反した政策に傾斜するという形で民主党に打撃を与えるのではないかという意見があることも紹介している。近年の米国の政治状況を理解する上で良い論説と思う。

・フォーサイト
 市販されておらず通販のみだが、相変わらず良質の記事が多いので購読を推薦する。

「北朝鮮をテストするために私たちは妥協し対話した」
 フォーサイト編集部からビクター・チャ氏へのインタビューの形を取っている。現在の米国の北朝鮮政策に大きな影響を与えたとされるNSCの日本・朝鮮部長であった氏に、最近のアメリカの政策転換の背景を聞いている。
 チャ氏によれば、転換はなく米国の真意は何も変わってないとのことである。2005年9月の共同声明後、北朝鮮が何も行動していないため、真意をテストする必要があり、そのために米国も一度は真剣さを示す必要がある、それが1月のベルリンの直接交渉であり、BDAの凍結解除であるということだ。つまり、今年2月13日の共同文書はそのテストで、送金が終わってもなお北朝鮮が単なる時間稼ぎをしていると判断されればそれは落第であると判断するようだ。次のステップとしては、国連決議1718に基づく制裁は今も有効であるし、今後は北朝鮮のみが問題であることが明確となるので五ヶ国の共同歩調が可能になるであろうとしている。
 BDAの口座凍結は予想以上に効果があり、それ以降巨額の偽ドル札事件は発生していない、また米財務省は北朝鮮当局に資金に関して様々な質問をし、その回答は「有益」なものであった、そうした意味でもBDA凍結の意義はあったという事らしい。
 最後にチャ氏は、学者として米日同盟の重要さは理解していても、政策を実行する現場にいると米国が日本を信頼していることを肌でひしひしと感じ取れた、と述べている。ある程度はリップサービスかもしれないが、そうであるなら多少安心出来るかもしれない。
posted by カワセミ at 23:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 世界情勢一般
この記事へのコメント
カワセミ様

こんばんは。私も、雑誌は、『論座』と『中央公論』しか、(買って)読まないのですが、中央公論は、仰る通り、手堅いですね。

ただ、最近、おもしろいのは、『論座』でしょうか。

7月号には、小林よしのり氏が、出ていたり、又、萱野氏の「承認格差」のテーマにした論稿などは、なかなか、従来、左派に挑戦的な感じで、内容はともかく、おもしろい構成になってますね。また、政治家との対談、フォーリン・アフェアーズの翻訳掲載と構成にかなり、凝っている印象です。

フォーサイトも、ヴィクター・D・チャ氏のインタヴューが読めるだけで、私的には、買いですが・・・w

チャ氏の、ソフト・エンゲージメント論、どこまで、成功するんでしょうね。基本的に現状もこの路線ですから。もちろん、成功をどのレベルに設定するかにもよりますが。。。

すいません、コメントというより、ただの感想・印象になってしまいました。駄文、失礼、致しました。
Posted by forrestal at 2007年06月29日 22:10
いつもコメント有難うございます。

論座は全然ダメな論説も多いのですが、議論の提起という意味で興味深いものも多いですね。これなら内容はともかく意味があるかなというのもちょくちょくあります。「希望は、戦争」と物議を醸したものは意味があったかと思います。内容自体に賛成は出来なくとも、あれに届く言葉を考えるのが政治、というより強者の役割の一つかなと思いました。レベルは違いますが、テロ対策などと問題を同じくするものがありますね。

とにかく中道左派の本格的復興がないと論壇も現実の政治も発展しないので、古色蒼然たるマルクス主義にはご退場いただきたいところです。そうでないと右派の復興もこれまた無さそうですからね。

Foreign Affairsは、一部落ちるのはありますがさすがに水準高いですね。最初朝日新聞社ならForeign Policyがまだしも似合うかなと思っていたのですが、同じ雑誌内で違うのもいいですね。そっちはそっちで正論とかVoiceあたりがやると楽しいかもしれません。
Posted by カワセミ at 2007年07月03日 00:21
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