体調はかなり戻った。しかし今年はひどい目にあった。声が出ないというのは不便なものだなと実感。一応復活だがブログの更新がマメになるとは限らない(苦笑)
ここしばらくテレビなどで断片的に報道されている話題に関して軽く感想など書いてみる。現在の安倍政権に関してだが、どうも潮目が良くない。手堅い顔ぶれと思っていたが妙に浮世離れしているのである。
まず中川幹事長。いくつかの雑誌で報道されている所によると、復党問題は当選している12人については世論の反発も少ないと踏んでこのような形を取ったと言われている。その真偽はともかく、議員を辞めるという事まで条件を付けたというのは異様な話である。言うまでも無くその権利は本人と有権者にしかないのであり、せいぜい自民党から追放するというのが最大限の処罰であろう。これはまともに政権を担える政党が自民党しかないという意識の無意識な反映なのだが、こういう点に自覚的になっておかないと足元を掬われる。復党問題に関しては以前にも書いたが、素直に別の政党として政治活動をすれば良いだけの話だ。その上で連立政権なり閣外協力を考えれば良いだろう。
この種の世論との乖離はこれまでの自民党の政治も良く出てきた。その本質は、自民党の国会議員が立法府そのものを軽視しているという問題である。党の中でどう地位を得るか、行政府に属することが可能かどうか(つまり大臣等の役職につけるかどうか)という事に一義的な関心があるからだ。これは野党の無力がその大きな原因の一つなのだが、構造上の問題も無視できない。大統領制と違って内閣が法案を提出可能であり、委員会の権威が例えば米国などのそれと比較して低いからだ。これを改革するには、議員の数をかなり減らすしかないと思う。特に参議院に優秀な人材を集めるべきであろう。
次に久間防衛庁長官。先日も米国向けのミサイルは実質的に迎撃できないという発言をしていたが、今回も小泉政権時のイラク戦争支持は公式見解ではない云々という話をしていた。これらの発言はそれぞれ法理的な原則や実質的な部分を重視した、いわゆる行政官僚の意見に近い。恐らく久間氏は自民党内で各種立法作業における実力は高いと認められていた人物に違いない。にも関わらず、地位と人物の関係は実に微妙である。内閣総理大臣の下、国防に関して首相に準じる最高クラスの権限を持つ人物の発言としてはどうであろうか。理念的な原則を示すのは首相としても、その下で戦略を示す最高責任者が枝葉末節に口を出している印象は否めない。ミサイル防衛に関しても、野党に対して毅然と「日本国憲法の平和主義を、やるべき事をやらずに済ませる言い訳に使うのは憲法を貶める事に他ならない。同盟国の人命を尊重しないそのような意見には、護憲派を自認する政党が真っ先にその道義性を非難するのが自然な事であり、そうでない事には驚きを禁じ得ない」とでもコメントしておけば充分であろう。
これで思い出したのが、先日竹中氏が閣僚時代のエピソードを語っていた記事である。この「戦略は細部に宿る」という部分は、ただ読むとそうかと聞き流してしまう。が、このエピソードは日本の政治の問題点も如実に示している。ここでは、「大きな戦略のためには細部の積み重ねが重要である」という言い方に抑えなければならない。なぜなら、閣僚がそのレベルに口を出すべきではないからだ。ここでは竹中氏が「1m先へ行け」と示したとしている。しかしそれは本来閣僚の仕事ではない。やはり10Km先の目標を断固として示し、そこに至る経路に関して行政官僚の複数のチームに出来れば各々複数の案を作らせ、それらの案を取捨選択、整理統合し、最終案を決定するべきである。もちろんやや大きなマイルストーンが見込まれる場合には閣僚自ら示しても良いが、それは二次的な問題である。
最後に安倍首相の曖昧戦略に関して。結論的に言うと、これは恐らく90年代前半までは通用した手法で、現在は無理だと思う。曖昧と報道されている時点で失敗で、柔軟と報道されなければならない。即ち、核になる理念や政策があって、それを実行するための手法は臨機応変に対応しますよ、というメッセージが国民に伝わってなければならない。現時点では出来ていないと思う。コアになる短いメッセージを発して、実力のある閣僚を信頼して任せているとせねばならないだろう。実際、主要な民主主義国で人気のあるリーダーは明確に理念を語っているのである。日本も例外ではないというだけであろう。長々としたスピーチを魅力的に出来るかといえば、それは日本人に少ないタイプなのかもしれないが。
それにしても小沢民主党は困ったものである。安倍内閣はそれほど良いものとは思えない。個々人の能力は恐らく歴代内閣でも高い部類であろう。しかし、有機的な繋がりをもって行動しているかというとそうは思えない。国民の政治家に対する要求水準が高まっている今はチャンスなのだが、今の野党がそれを生かせそうも無いのは残念だ。なまじ来年の参院選では健闘しそうなのが逆に残念でもあるくらいだ。
2006年12月12日
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安倍さんの復党問題に関してですが、これは支持率ダウンを覚悟した上でやってるんでしょうね…。民主党が現状な以上、復党した議員の団体票で手堅く国会運営出来てしまいそうですし。。
前原前代表が代表だった時は民主党にも期待できたのですが、結果は見ての通り。前原氏の政治能力が足りなかったと言うよりも、自民党に対抗できる政党にしようとすると内部崩壊する、その構造に根本的な原因がありそうです。
結局のところ、与党が世論と乖離した時に、国民に対抗策が皆無なのが問題ですよね。自民党しかマトモな党がないのなら、自民党に対して選挙を行って、・支持する人は+1・支持しない人は−1と計算して議席を決めた上で、余った議席を民主党に割り当てても問題が無い気がします。情けない限りですが・・・。
安倍氏自身、結構周りから大事にされてきているタイプなのでなかなか割り切れないのでしょう。党内基盤頼みの首相という事情もあります。幸か不幸か民主党があの有様なので強い指導力を発揮する機会がまだ無いというのもあります。
民主党に関しては、もっしゃる通り構造的な問題でしょう。長期で見れば、伝統主義的な保守主義者とややリベラルな自由主義者で二大政党にまとまっていくようには思っています。歴史は長期で見れば合理的な帰結をしますから。もちろん、双方の政党とも合理的で現実的な議論が出来るという前提ですが。しかし、下手をすると半世紀くらい遠回りをしてからやっと、という羽目になるかもしれません。何しろパラメータに政治家個人の寿命というのまでありますから、社会の変化は激しいが政治意識の変化は遅れはちになるという現象はこれからもっと深刻になるかもしれませんね。
中川幹事長に関するところでは、復党問題、御説にもある通り、おおまかにいえば、自民党の常識と国民の常識との乖離でしょうか。政治とは、高度な常識が問われます。又、構造上の問題もあるでしょう。自民党内におけるポジション、つまり、立法府(での仕事へのやりがい)と行政府のインセティブバランスの差異でしょう。さらに、自民党に変わるオルタナティブがない。まあ、野党のだらしなさですが・・・。こういう次の選挙を見込んでのことでしょうが、支持率を下げてまで行った今回の件で、安倍内閣は、参議院を抑えられるのかという疑問が残ってます。
次に久間防衛庁長官、体質なんでしょうか、言葉で巧みに翻弄しようとしている印象です。これは、前総理・内閣から引き継いだものもあるので、仕方ない部分がありますが、やはり、国民に与える印象は、悪い。継承しながら改革する(否定も含まれますが)、この一見、矛盾する路線が安倍路線ですから。
安倍総理もそうですが、問題の選択、タイミングは、非常に重要です。
体調が優れないようですがご自愛ください。
久間長官の発言のたびに、マスコミや野党のリアクションが頓珍漢で、彼らの軍事知識のなさにあきれています。
米国向けのミサイルは実質的に迎撃できないという発言なのですが、北朝鮮や中国、ロシアから発射されたミサイルは、日本上空を通過しないので迎撃のしようがないんですよね。
省昇格を控えた大事な時期に石破氏みたいな、おたくではなく、実務家に任せるほうが私としては安心できます。
民主党は、ついに選挙互助会に成り下がった感じです。
小沢さんが党代表になってからさらに拍車がかかった気がします。このまま社民や国民新党などの旧時代(と思われている)方々と野合していると衰亡への道まっしぐらですな。
>forrestal様
中川「幹事長」ですね。本文のほう、修正させていただきます。失礼しました。
参院選は・・・・どっちの政党がより駄目か、という事になりますが、今回は民主党への政権交代には関係しないので、安倍氏が辞任するとなる時の有力候補次第でしょうか。今なら麻生氏が想定されると思いますので、だったら民主党に入れるか、という人も多いかもしれません。自分がそうするかとなると、さて難しいところですが。
>前総理・内閣から引き継いだものもあるので、仕方ない部分がありますが
小泉首相も似た部分がありましたが、国民の多数派を代弁して対立勢力を揶揄するような側面がありました。それと比較すると視野が狭い感がありますね。
>鉄男様
日本の場合、政治家に限らず一般のビジネスマンなど含め、自分の地位より一つ低い地位の人間の業務に通じる事を良しとする側面があります。部下に的確なフォローをするという意味でそれは美点なのですが、やはり第一に肝要なのは自分の地位の業務です。米国だと国防長官に相当する地位の人物としては、足りないものが多いと思うのですが。まず最優先されるべきは、国防の最高責任者として同盟国との信頼を維持する事ですよね。「いかなる軍事情勢にあっても、同盟国の市民の生命を尊重する事が最優先である事は言うまでもない」と一言言っておけば良く、個別のオペレーションに関しては部下にコメントさせればいいだけの話です。
民主党は本当に選挙の互助会ですが、それすら怪しいかもしれません。もっとも自民党も似た面がありますし、ある意味社民党や共産党は政党らしいと言えばそうかもしれません。ただ言うまでも無く別の大きな問題があるわけですが。