2006年11月12日

2006年米国中間選挙

 世の中での扱われ方も大きいし、既に様々な人がコメントしているので書くこともあまりないが、やはり節目でもあるので軽く感想を記しておく。

 まず上下両院で民主党が過半数になったという事であるが、すっきりした結果であり政治の構図に紛れが無くなったという意味で良かったと思う。そもそも改選議席から考えて次の2008年においては共和党が上院の多数派を占めるのは困難であろう。また、今回の選挙戦の経緯を考えると、ブッシュ大統領がここで「潔く」しておく事は有益であろう。

 選挙後のブッシュ大統領の記者会見のリンクを示しておく。ここでの声明に限らず、イラク統治の失敗ということを「敗因として強調」している。もちろん米国の多くの有権者の期待する水準を大きく下回る実態であり、低く評価された大きな原因であるのは間違いない。しかし今回の選挙戦の経緯は、広く知られているようにフォーレー元下院議員のスキャンダル、金権腐敗などのような政治的不道徳がターニングポイントとなったものだ。それが共和党の信頼を大きく損ね、有権者のバランス感覚により野党民主党に投票したという事であろう。実際、今回落選した議員は品行方正とも言い難い人物がままいる。上院の議席数がギリギリとはいえ、ここで労力をかけるのは今後に禍根を残しかねない。いわば政治的損切りみたいなものであろうか。

 そのように考えると、先のブッシュ大統領の記者会見がスキャンダルなどの件をほとんど語っていないのは興味深い。これは多くの共和党議員に「恩を売った」ようなものではないだろうか。両党の融和を第一に語り、イラク問題とラムズフェルド国防長官の辞任が強調されている。ラムズフェルド氏の辞任は予定されていた事であるし、実際、イラク問題で民主党が素晴らしい解決策を持っているとは思いがたい現状、敗因はそれである、じゃあ民主党側はどうなのかとボールを投げ返すのはなかなか見事な対応だろう。いずれにせよ超党派的な結束はここで示しておくのは適切だ。

 それにしても、ラムズフェルド国防長官をネオコンに分類して語るマスコミの不見識はどうにかならないものか。RMAを占領統治に応用したのが失敗であり、ネオコン派はむしろ当初から巨大な関与を望んでいた。そうであるから結果として政治的な命脈は絶たれたわけではなかった。もっとも大規模な派兵をしようにも米軍は湾岸戦争時と比較してかなりの兵力削減をやってしまっている以上、不可能であったのかもしれない。で、これから民主党との超党派でとなるとどのような選択肢があるだろうか。NATO や日本などの同盟諸国に追加派兵を要求、くらいしか思いつかないのだが。そもそも多くの問題を米国だけで抱え込み過ぎるという文脈の批判も根強いのだから。
posted by カワセミ at 00:33| Comment(6) | TrackBack(2) | 米国
この記事へのコメント
かわせみ様
 過去数年間の議会共和党は、リーダーシップ不在や露骨な利益誘導で旨くいってなかった。民主党多数議会で、むしろ事態が(アメリカ議会の伝統である妥協という形をとりつつ)好転する可能性もあり。そこに期待をいたします。ただ、もうちょっと中期的な視点で、今回の結果が保守主義の敗北なのか、保守主義の逆襲なのか、考える価値はあるかと思います。レーガン、サッチャー以来、保守主義は、少なくとも市場重視と小さな政府という形で、経済面では大きな流れであり、格差やグローバル化に伴う貧困という反論にもかかわらず、それに替わる世界的なシステムは見当たらぬと考えます。ただ、政治の世界では様相が異なっており、大衆民主制の下で真の保守主義が成立するのかどうか、それはどういうものか、未だ答えは出ておらないという印象です。保守の流れの中から出てきたはずの政治勢力が、利益と自己保身の誘惑の中で機能しなかったことへの強いNOが、共和党敗北の一因ではないかと思います。アメリカの保守が、共和党から距離をとるのか、はたまた民主党の一部に同調者を見出すのか(その兆候は、今回の選挙で若干見られました)、80年代以前のように独立した勢力になるのか、2008年を占う意味でも重要と考えます。
Posted by M.N.生 at 2006年11月13日 09:50
カワセミさま

心機一転、ブログを移転いたしました。今後、このネームを使いますので、どうぞよろしくお願いします。

私は、敗因は、ジョージ・W・ブッシュ政権、(共和党)の自滅であると考えています。それゆえ、民主党と妥協しなければいけないのは、事実ですが、米国世論が、リベラルに一気に傾斜すると考えるのは、早計だと思います。
共和党(保守)ー中間ー民主党(リベラル)と簡単な図式にすれば、およそ、世論は、中間あたりに戻ったのではないかと考えております。
もちろん、ご存知の通り、アメリカの場合、なにがあっても、共和党・民主党という層が、30数%いるわけですが。
9.11テロ以降、戦争状態にあった状態が沈静化している表れ、大きく振れた振り子が、真ん中に戻りつつあるという印象です。
ただ、この選挙後は、2008年の準備に入りますから、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、まあ、不器用ながらも、共和党支持、取り戻しのために、早い対応をいくつか見せています。
ジョージ・W・ブッシュ大統領もかなり柔軟に政権運営、対外政策を進めるのではないかと思います。
一方、民主党は、政策で議席を伸ばしたというより、NO(自滅)で、伸ばした分、まとまった、外交政策(イラク政策など)があるわけでもないですし、実際、現実的なオプションは、そう多くありません。
スタンスとしては、強硬から軟化に多少なり向かうでしょうが、効果や結果に関しては、あまり期待できない(大きな進展のない)状況が続くのではないでしょうか。
そのような2年になる気がしています。
Posted by forrestal at 2006年11月13日 23:14
>M.N.生様
今回の選挙は有権者のバランス感覚という事でいいのですが、おっしゃるように今後の展開はなかなか判断が難しいと思います。米国の多様さを二大政党がカバーしきれていない面はありますが、国内政治であれば州政府の役割も大きいので、連邦政府の役割を問う選挙は大きなテーマでの一発勝負という側面もあるかと思います。また大統領選挙では個人の資質も決定的ですし(民主党もオバマが出てくれば勝ってしまうような気がします)潮流が反映されるのは少し長いスパンでしょうね。
現状、アメリカの保守に不満は強いと思います。彼らにしてみれば取りうる選択肢から選ぶしかない。当面は民主党右派がどんな政治的性向を見せるのか、注目しています。

>forrestal様
えーと、元あいけんべりー様でしょうか。違ってたらごめんなさい。
内容的にはおっしゃる通りだと思います。共和党は選挙後のダメージの最小化はうまくやりそうな気がしていますが、民主党に関しては何とも言えないものがあります。とかく人物と地位の関係は微妙で、例えばペロシ下院議長などもそうなのでしょうが、やらせてみないと分からない面があります。特に民主党系の政治家はそんな人物が多いように思います。共和党以上に実力者各人の倫理的信念を把握しておく必要があるのかもしれませんね。
Posted by カワセミ at 2006年11月14日 00:46
はい、そうです。元○○○○べりーです。
たまには、拙ブログを覗いて(ダラダラやってますが)、厳しい批判を頂けると幸いです。
(願望ですが・・・w)
又、新人ブロガーとして、よろしくお願いします
Posted by forrestal at 2006年11月14日 04:59
お久しぶりです,カワセミ氏.

ラムズフェルドの首を切るならパウエルと一緒に首を切るべきだったんでは,アレが政策転換の最後のチャンスだったのではないかと思ったり思わなかったり.
首を切るのが遅い……
退役軍人(それも高官)による批判が出て来た後に国防長官を首にする羽目になるとは.
ブッシュ政権と軍の間に対立関係ができていないかと心配ですね.

イラクについては,
イラク人の中に能力の高い人間が出てきて,その人物が実権を握ることを影から支援することしかできないのではないかと.
後悔はそれはもう大量にありますが,こうなってしまうとドウにも成りません.
せめてモスル等の油田からのパイプラインを守り,バグダッドなどの危険な所からは最低限の兵力を残し引き上げ,ある程度安全な場所に兵力を集中させてそこを更に安全にして,そこで警察と軍の育成をやりなおす……くらいしか思い浮かべません.

今からイラクに20万人以上増派とか言ったら,狂ってるとしか思われないでしょうから……
Posted by おきゅくきゅきゅ〜 at 2006年12月08日 17:45
お久しぶりです。

The Economistなどもかなり早期からラムズフェルドを辞めさせろと言ってましたね。確かにそうでしょう。私はアブグレイブの直後にするべきであったと思います。ただラムズフェルド氏に関しては、チェイニー副大統領が大変尊敬していたという話らしいのでなかなか難しかったのでしょう。

いわゆるRMAへの過信なのでしょうが、むしろネオコン筋に一貫してやらせたほうがまだマシだったかもしれません。早期にかなり無茶な増派もやったでしょうし、イラク国内にある種の構造が出来てしまう前に秩序を作るべきだったでしょう。

目標としては、ある種の途上国型、首都といくつかの大都市はそれなりに機能しているが地方はどうなってるか分からない、というのを当面達成するべきでしょうし、それを試みてはいたようですが、首都ですらうまくいっていないようです。やはり兵力不足という事実が全てでしょうか。人道的にやろうとするとコストがかかりますから。
Posted by カワセミ at 2006年12月12日 01:59
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Excerpt: 今日のお昼、ウィークリー・スタンダード誌の若手記者と食事する機会がありました。 彼は、12月11日発売の最新号で、小泉首相とブッシュ大統領の関係を、かつての中曽根首相・レーガン大統領の関係になぞらえ..
Weblog: やじゅんのページ/The World according to YAJUN
Tracked: 2006-11-13 23:10

ラムズフェルド、更迭前にイラク政策の失敗認め修正進言していた!
Excerpt: 11月の中間選挙後に更迭されたドナルド・ラムズフェルド氏 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は2日、ラムズフェルド国防長官が11月の中間選挙後に更迭される2日前にホワイトハウスに送った極秘メモ..
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Tracked: 2006-12-04 04:35