2006年10月24日

郵政民営化造反組の復党問題に思う

 補選に勝利を収めた自民党であるが、早速昨年の郵政民営化造反組の復党を検討する事態になっている。正直うんざりするのだが、この問題に関しての議論は時に奇妙な視点に立つような気もするのでエントリしてみたい。

 自民党はそもそも自由党と民主党の合併によって成立したという経緯もあり、政策的には広範な主張を抱えている。しかし、この政党自体が他の政党に対して接する際にはかなり一線を引いていたという側面がある。それは対(旧)社会党に対するそれが典型だが、ある種の蔑視感情とも取れるアウトサイダーへの対応だ。こういうと語弊があるが、同じ日本人というより外国人に対するようなものでなかったか。まともに踏み込んだ政策論議は少なかった。自民党それ自体が日本社会のそれを反映するようなコンセンサス社会となっていた。もちろん、そうなったのは旧社会党の非が大きい。

 20世紀末から昨年の9.11の衆院総選挙にかけては、それを打破しようという模索が続いた。政策により政党を選び投票するという、本来の政党政治の姿を多くの議員は思い描いていたに違いない。その意味で、その間の政党の離合集散はそれ自体が話題になることは多かったものの、大局的に見れば有権者への提示方法の模索と言う事も出来る。もっとも個々の政局の渦中にいた人々はそんな事を言っている余裕は無かったのだろうが。

 昨年の衆院選挙はどうだったろうか。それは長い民主主義の歴史を持つ国々から見れば非常に原始的な段階で、部分的には歪んだものであったけれども、小泉首相が主導する政治勢力と、守旧的な伝統主義勢力、同じく古色蒼然たるリベラル勢力の並立という、有権者の選択が意味を持つと実感できる形で実施された。これが昨年の衆院選が達成した歴史的意味である。そしてこの政治的選択という側面における今後の進化は、各政党が切磋琢磨する事による、活発で成熟した政党政治に発展することでしか無い。だからこそこの復党問題には潔癖に対処しなければならない。日本人が達成した僅かばかりの進歩を簡単に投げ捨てることになるからだ。

 米国を例に取ってみよう。例えば第一次ブッシュ政権でやや政治的立場が異なると言われたパウエル国務長官であるが、だからといって離党して上院か何かの選挙に出馬し、当選するなり落選するなりした後、共和党に復党することなど考えられるだろうか?それに比べれば日本の場合は政党というより選挙の互助会のようなものだ。そして多くの国民はそれに慣れ過ぎてしまった。これを改善するには何が必要だろう?国民一般の広い支持が政党を支え、一部の利益団体などの意向で政策があまりにその党の本来の位置から大きく動くことが無い安定性が必要なのだろう。

 その観点で今回の復党問題を考えてみたい。個人的には議論の余地すらないと思うのだが、それでも検討するとなれば一定の手順を踏む必要があるだろう。まず、自由民主党という政党にふさわしい政治的な立場を有しているかを、新人議員と同様改めて問う必要があるであろう。そして、特定選挙区だけでなく、もう少し広範な範囲の、国会議員だけでなく一般党員も含めた党としての合意が必要であろう。個人的には、総裁選での地方ブロック程度の範囲が適当ではないかと考えている。都道府県単位では時に視野が狭くなり、全国レベルとなると候補者の評価に細かく目が行き届かないし、地域の代表として世に出てくるという本来の理念から離れすぎると思うからだ。もちろん最終的に党総裁を含む執行部の容認は必要であろう。

 この機会に、こういうプロセスを党員投票で決定するというやり方を制度化してはどうだろうか。一定の年数が経過した後に一定の審査プロセスにより立場が決まるというものである。党の広範な構成員が明確に責任を負っており、そしてその中で最も重い責任を負っているのが執行部であるという原則は確立されなければならない。そして、それが原因となって他党との選挙に勝つのも負けるのもその政党の評価だと構成員が受け止める覚悟が必要である。

 現民主党が今少し国民の信頼を得ていれば、この種の動きは政治力学上自然と発生したかもしれない。このまま旧社会党のようにならない事を心から祈る。悪くすると今年が凋落の潮目だったとなりかねない。
posted by カワセミ at 23:10| Comment(1) | TrackBack(2) | 国内政治・日本外交
この記事へのコメント
正直、考えるのも、億劫で、エントリしませんでした。

拙ブログでも、継承しながら、改革していくことを期待するとコメントしたけれども、カワセミさんの言うとおり、継承(政党政治の進歩)に逆行する。
政党の整合性や、首尾一貫性に欠ける。
エントリにもある通り、しかるべき手続きの制度化は、必要だが、国民の、支持者の信頼を裏切る行為に他ならない。
Posted by あいけんべりー at 2006年10月25日 00:28
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参院選へ〜戻すべきか戻さざるべきか〜
Excerpt:  来年の参院選を前に、郵政民営化に反対して自民党を離党した「造反組」の復党が議論の俎上に上がっている。毎日が配信した記事がわかりやすい。郵政造反組:12議員が自民復党へ 党内対立の懸念も 安倍晋三首相..
Weblog: talleyrandの備忘録
Tracked: 2006-10-25 18:01

<<国会議員というのは、、、呆れる郵政造反組の復党問題>>
Excerpt:  <<国会議員というのは、、、呆れる郵政造反組の復党問題>>http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/ne_06112703.htm         =ヨミウリオンラインより=..
Weblog: <毎日武勇伝?日記>
Tracked: 2006-12-01 19:44