2006年10月07日

ロシアと近隣諸国の外交模様

 ロシアとグルジアの間で緊張が高まっているとの報道がある。(参照1)反露的とされているグルジアのサーカシビリ大統領の政権弱体化を狙っているとされている。元々グルジアはその面積や人口規模に見合わずソ連・ロシア史に多くの影響を残す人物を輩出しており(参考:Wikipedia)しばしばロシア人に感情的な対応をさせる背景ともなっている。グルジアが検討しているとされるNATO加盟などとんでもないという所であろうか。

 その一方でラブロフ外相のポーランド訪問が報じられており(参照2参照3)課題が山積しているものの、ロシアが関係修復の動きを見せているらしい。合わせて考えるとなかなか興味深い。

 グルジアと違ってロシアはポーランドのことを尊重していますよと言う意図があるかどうかはともかく、外交交渉の本命はこちらかなと思えなくも無い。これはこの付近の報道(参照4)を見るとロシア外交としてはNATOの拡大を防ぎたいというのがまずは第一の目的で、既に加盟してしまったポーランドの警戒感を減退させるのが総合的に見て得策と判断しているのかもしれない。ちなみにこのミサイル防衛システムのポーランド配備の件は以前のエントリでも挙げたように少し前から囁かれているものだが、米政府の公式見解としてはまだ正式なものは無いようだ。ポーランドの国内世論も反対のほうが強く、むしろ標的になる可能性の方を懸念している面もあるようだ。(参照5)そのためロシアとしては打診の余地ありと考えたのかもしれない。しかしこれは同じく報道されている石油パイプラインの件と外交上噛み合っていない印象もある。

 石油パイプラインの件ではこのニュースでの報道がやや興味を惹いた。(参照6)バルト諸国とポーランドをすべて迂回するという事で、関係諸国が反発している。

Fotyga on Thursday reiterated Poland's "negative position" regarding the project. Along with EU Baltic state partners Lithuania, Latvia and Estonia, Poland objects to the planned pipeline which bypasses all four states as posing a threat to their energy security.


 シュレーダーが悪かったと言っても始まらない。この計画の撤回をメルケル首相に打診して却下され、ドイツとポーランドの関係も怪しくなっているという話もある。マスコミはモロトフ=リッペントロップの再来とか大げさに騒いでいるが、まぁ分からなくも無い。東欧諸国の不信を招いた側面はあり、後から見ればドイツは政治的負担を背負うべきであったと結論づけられるのではないか。

Fotyga also said she had raised the issue of interrupted flow of Russian crude oil supplies to Lithuania's Mazeikiu Nafta oil refinery. Poland's leading PKN Orlen fuels giant is in the process of buying out Mazeikiu.


 この部分も微妙に面白い。ここはバルト諸国唯一の精製施設である。石油産業でポイントとなるのは原油そのものよりむしろ精製で、日本はあらゆる工業部門をほぼフルセットで持ち、とにかく生産設備だけは無駄にある。そのため例えばエネルギー問題だとタンカーで原油を引っ張ってくることだけしか意識に無い。そのためこの種の事情はなかなかピンと来ない。ちなみに近年の原油価格の高騰には、米国内の精製施設への投資不足も一因になっていたようだ。要は付加価値という事であるのだが。原油価格は上下するが付加価値は持続的に生み出すことが出来る。

 いずれにせよ、ロシアはあの手この手で自国の影響力確保を模索しているようだ。個別にはなかなか手強い交渉相手である。しかしパイプラインの件など見本だが長期に見ると不信を買って関与を薄くされてしまう。グルジアもうまくいっていない。今回の件はウクライナへの牽制の意図もあるがこれも不調の感がある。原油価格が下落するとかなり手詰まりになるのではないか。そうなるとかなり高値で買う客に甘くなりそうで、さて中国がどうかなとこれまた懸念されるが。
posted by カワセミ at 02:09| Comment(0) | TrackBack(1) | カナダ・欧州・ロシア
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