2006年09月07日

プーチン大統領の南アフリカ訪問

 プーチン大統領が南アフリカ共和国を公式訪問していると報じられている。ロシア大統領の訪問は初ということで様々なメディアで取り上げられているようだ。

 今までの歴史的経緯も含めて記してあるものとしては、BBCの記事が比較的良いだろう。(参照1)冷戦時代にはANCをソ連は支援していた。ソ連はアフリカの多くの国に政治的に強い影響力を有していた。この歴史的繋がりはエリツィン時代あたりに一度疎遠になっているが、それを取り戻そうとするかのような試みである。

 今回の訪問は多くの財界指導者を伴ったものであり、経済協力の対話を強く押し出したものとなっている。(参照2参照3)ただソ連時代もそうなのであるが、経済開発というのを資本の投入による一次産品の利益を得るものと考えているフシがある。いわゆる他の先進工業国のように知的活動による付加価値の創出を重視する側面は弱いようだ。また今回のプーチン大統領の訪問は、かつてアフリカでソ連時代にやっていたことを今は中国が行っていることに刺激されたという側面があるのだろう。原子力を取り上げたというのもなかなか興味深い。南アフリカ共和国は、恐らく核兵器を完成させた後に核武装を断念した例としては世界で唯一の国であり、原子力技術の供与においては国際的な摩擦を起こすことが無いと判断したのであろう。また、これは不適切ではあるのだが、ロシアは自国の石油資源を経済的な資産と考えるのみならず、政治カードと考えているフシがある。その強化という観点からすれば、アフリカ諸国への働きかけは有効かもしれない。しかも南アフリカは上記の記事でも書かれているように金やプラチナ、ダイヤの大産出地でもあり、ロシアとの協力体制が築かれれば市場に対する影響力は増大する。

 その意味で一石で二鳥も三鳥もという面はあり、なかなか巧妙な外交のようにも見える。しかし総合的に見るなら、原子力技術の供与という面を除けば古典的な資源外交であり、いかにも古色蒼然とした感は否めない。アフリカ地域で中国と正面からぶつかったとしても、逞しい現地の人間にボラれるだけのように思われる。

 以前のエントリでアフリカ南部地域から日本に対する働きかけがあったことも少し書いた。日本の自動車産業などへの期待は大きかったのだろう。今回のロシアでも上記の記事にあるようにミニバンの組み立てがきちんとリストに入っている。日本は治安情勢の厳しい地域への投資には他の先進国以上に二の足を踏む傾向があり、この件も例外ではなかったのであろう。その意味で、ムベキ大統領は権力政治に傾倒する傾向のあるプーチン大統領をうまくあしらったと言えるのかもしれない。

 遠交近攻というのもこれまた大時代的な表現だが、遠方にある世界の様々な国に対して外交を進め、近隣諸国に対しては発言力を増大させようという意味では、プーチン大統領と小泉首相はやや共通点があるのかもしれない。ただ、一部手法が似ているとしても、最終的に自国の国益にきちんと戻ってくるのか、現地の人間に信頼を得ることが出来るか、足元を見られるような事がないかと総合的な評価をするとかなり実態は違う。小泉首相の場合は特に目立つが、あまり国内評価の高くなかった過去の政権でも帳尻はそれなりに合っていた。結局どの国でも、そこいらのトータルの結果はちゃんとGNPの数値に現れているのではないか。失敗はサウジやイランへの資源外交とか、中国やロシアと似たような外交を展開したときに顕在化している気もする。欧米諸国はうまい具合に民間企業が上前をハネているのである。
posted by カワセミ at 00:11| Comment(3) | TrackBack(0) | サハラ以南アフリカ
この記事へのコメント
>ただソ連時代もそうなのであるが、経済開発というのを資本の投入による一次産品の利益を得るものと考えているフシがある。いわゆる他の先進工業国のように知的活動による付加価値の創出を重視する側面は弱いようだ。

ロシアが先進国に転じるのは遠い未来のようですね。ある意味それは日本にとっては有難い(?)ことかもしれませんね。
中国は付加価値ってやつを理解しはじめてるようなんですが、どうでしょう、先進国に果たしてなれるんでしょうかね?
Posted by コペテン at 2006年09月07日 22:34
ロシアの場合、どうにも社会が組織だって動かないようですね。
優れた文化の伝統を考えても、個々人や特定集団には
素晴らしい能力を見せる人がいると思うのですが。

仮にロシアが発展するとしたら、日本やドイツのように大企業がいくつかあって
それを支える側面も含みながら裾野の広い中小企業が存在するという
形態ではなく、特定の都市に独立的な価値を持った世界的ブランドが
出現するといった、例えばイタリアのそれにやや近い形になるかもしれませんね。

中国となると、優れた人物は外資系にあっさり行ってしまうように思います。
企業にはある種の文化的誇りを共有する集団のモラルがどうしても
必要なのですが、ちょっと道が遠そうです。将来は開けていると思いますが
やはり何十年もかけてゆっくりと進むのでしょう。その時間が稼げるかどうかが
問題の核心ではないかと思います。
Posted by カワセミ at 2006年09月14日 23:47
よくロシアの専門家は、ロシアは砂みたいなもんだと言いますね。一体となっているようで、実は決してまとまらない、根っこはバラバラの連中、という意味らしいです。
私自身の経験からいえば、ロシア人の特徴はとにかく「強引」です。裏を返すと単純なところもあるのかな・・・まあ、そんな愛らしい連中ではないと思いますけど(笑)。
ロシアと中国というのは面白いテーマなんですよね。この二つの国の関係は日本としても十分注視していく必要ありますしね。
Posted by やじゅん at 2006年09月19日 23:35
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