2006年07月22日

エチオピアのソマリア派兵の背景

 近年無政府状態と言われてきたソマリアでは、国際社会の調停により暫定政府が存在しているが弱体な存在であった。イスラム勢力が暫定政府を首都モガディシオから追い出して実権を握りつつあることは報じられていたが、この度エチオピアがソマリア領内に派兵しており、波紋を広げている。

 米国務省サイトでのソマリアの項目を挙げる。概況が記されており、Wikipediaなどもこれを引いているようだ。(参照1)北部は地域社会がそれなりに機能しており、首都を含む南部情勢が特に問題になっている。和平への試みは色々とあった。しかし欧米などの影響力のある国はそれほど本腰を入れているという風でもない。近年は中東に労力を割かれているという印象もあるし、悲劇という点ではダルフール的なものに目が行く。(といっても何がしかの実績を挙げる活動をしてきたとも言い難いが)地域社会の取り組みはどうかといえば、東アフリカ諸国での枠組みはないこともない。IGADがそれだが、しかしこの組織は、Wikidediaの項目(参照2)で参加国の顔ぶれを見ただけで期待できないのが分かるような代物だ。適切とは言い難い決定もあり、上記国務省サイトから引用する。

In 1997, the Organization of African Unity and the Intergovernmental Authority on Development (IGAD) gave Ethiopia the mandate to pursue Somali reconciliation.


 ところがこのエチオピア、ソマリアとの間に恒常的に紛争を抱えていた国だ。実質的な権限がさして与えられていたわけではないが、単なる調停役としても不適格と言えるだろう。エリトリアとの間との紛争も続いており、イスラム教徒からの評判はただでさえこの地域で悪くなっている。

 この付近の経緯を含めて報道したニュースとしては、BBCのものが1ページにも関わらずうまく背景も含めてまとめており、参照すると良いだろう。(参照3)その他のニュースソースも一部挙げておく。(参照4参照5)最初のソースから、両国の不和の状況を記したものを引用しておく。

The bad blood between the two nations reared its ugly head again when Igad unveiled recent plans to send regional peacekeeping troops to Somalia.

Many Somalis were outraged at the thought of Ethiopian troops - even peacekeeping ones - being deployed.

Ethiopia has also been uneasy with the military successes of the Union Islamic Courts (UIC), the Islamists who have pacified the capital, Mogadishu, and now control huge swathes of southern Somalia.


 これらのニュースの背景には若干補足が必要かもしれない。そもそも大ソマリ地域という言い回しがあり、エチオピア領ソマリなどが存在する。また冷戦時代からの経緯もある。エチオピアは親ソ連であり、現在のエチオピア経済の苦境は社会主義の失敗も原因の一つである。1977年にはソマリアとの間でオガデン戦争(参考ページ:参照6)が発生している。もっともソマリアが当時軍事大国だったのは、事前にソ連の援助を大量に受け取っていたということもありややこしい。結果的にソマリアはソ連に捨てられ、米国は全面的に代わりにはならなかった。
 このオガデン戦争、ソマリアが領土欲から起こしたものといわれている。エチオピア領ソマリの一部であるオガデン獲得を狙ったものだ。結局は失敗し、ソマリア軍は大打撃を受け、戦争の敗北からくる混乱が政権崩壊となった。そして安定的な政府はなかなか成立せず、まだ記憶に新しい米クリントン政権時の失敗へと繋がる。それにしても、当時のガリ事務総長の意欲的な提言は、現在のブッシュ政権ならどう扱っただろうか。とはいえ、時代は9.11をまだ経験してはいなかったのだが。なお米国は今回のエチオピアの派兵に懸念を表明している。(参照7)穏健なイスラム教徒の主導権を期待するという意図とされている。ユーゴ紛争時のムスリムのごとく、イスラム教徒を保護するようなこともあるのに、今回はレバノンで叩かれているタイミングでもあり報われないことだ。いずれの場合も総合的に見て妥当性はあると思うのだが。

 不思議なことに、ソマリアは地域としての一体性は強い。民族的にはほぼ一様で、ソマリ語が通じ、宗教的にもイスラム教だ。内戦は民族紛争というより氏族の抗争のレベルだ。直感的には和解できないというほどでも無さそう印象がある。エチオピアも人口が多い割に一体性は強い。そして気候面も極端な乾燥気候というわけでもなく農業はそこそこ成立する。海運も、現在のエチオピアは内陸国だがジブチなどの利用も可能で、地域としてはそれなりに可能である。様々な面から考えても、他のアフリカ地域と比べてこの東アフリカ諸国の条件は悪くないはずだった。しかし政治は混乱し、戦火は絶えず、経済は苦境に陥っている。国の発展は分からないものだ、と思う。
posted by カワセミ at 05:15| Comment(0) | TrackBack(0) | サハラ以南アフリカ
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