2006年07月06日

北朝鮮ミサイル実験の米国内の報道に関するメモ

 ワシントン・ポストが条件付きで武力行使の容認を示す社説を掲載したと報じられているが、日本国内での報道が奇妙に大きいのが気になっている。米国が何か新規な立場に転換したかのような言い方になるのはバランスが良いとは言えない。軽く有名数紙の論調を取り上げて今回のミサイル発射問題の取り上げられ方をメモしておきたい。なお各記事はインターネット上で参照できるが登録が必要な場合が多い。

 ワシントンポストの該当する記事はこれであろう。(参照1)が、内容を見て分かる通りごく常識的な見解で、北朝鮮を非難し、中国と韓国の非協力を問題視する従来からの米国を代表する意見である。日本国内の意見とも大差ないだろう。話題になっている最後の部分も以下の通りである。

If China and South Korea are serious about stopping North Korea's development of weapons of mass destruction, now is the time to demonstrate it. If they are unwilling to act, the Bush administration should consider other means of preventing further North Korean missile launches. A proposal by former defense secretary William J. Perry and former assistant defense secretary Ashton B. Carter that the U.S. military destroy the long-range missile before it was launched, published on the opposite page last month, struck us as premature. But if diplomacy continues to fail, it must be an option for the future.


 外交で解決出来ない場合もある、と読者に覚悟を示したものとも言えよう。しかし今に始まったことでもなく、最終的なオプションであること自体は周知の事実である。これを大げさに扱う日本国内の報道はやや不健康であろうか。

 次に保守系のシカゴ・トリビューンを取り上げてみたい。(参照2)若干の軽侮の意図を込めながらも、挑発であるという意識にとどまっているようだ。いずれ対処せねばならない課題という意識は成立したであろうか。次のように読者に警句を発している。

The North Koreans know it too. We can expect more tests in the months and years to come. Eventually, unless an effective way is found to force the North Koreans to stand down, we will one day awake to the news that Pyongyang has a nuclear missile capable of hitting Berlin, Paris, Moscow and Los Angeles.


 あのう、Tokyoは、と思ったのは私だけではないだろう(苦笑)こればっかりは日本自身で騒ぎ出さないとどうにもならない。まぁ、米国としては以下の文章に集約されるのだろう。

The U.S. hasn't said yet what measures it would support. The Bush administration's subdued response may be the right, calculated, first response.


 最後にリベラル系と目されるNew York Timesを取り上げたい。(参照3)孤立路線と関与路線双方ともうまくいかなかったという認識が前面にあるようだ。中国の見解を重視しているのがこの新聞社の特徴をよく示しているかもしれない。

That could change now. The Chinese warned the North Koreans not to fire the missiles; the fact that Mr. Kim dismissed that warning is bound to anger China's leaders.


 また前半部分はブッシュ政権への批判を含めているが、非難するというまではいかない。歴代政権いずれも相手にしてうまくいかなかった地域だという認識は客観的だ。



 全般として感じるのは以下の点だ。米国政府が国内的に説明するのは、昨年9月段階で多くの国が複雑な交渉に参加し、一応の貴重な合意を達成したにも関わらず、北朝鮮はそれを踏みにじったという事になるだろう。これは事実として明白に示されているし、米国政府が最大限とも言える譲歩をしたという認識も当時から変わらず存在するだろう。むしろ北朝鮮に失望させられ続けてきた日本がこのロジックが見えにくくなっているかもしれない。またこの件に限らず、多国間の複雑な交渉を経てやっと成立した外交的資産をいとも簡単に踏みにじるのは、欧米諸国では非常に嫌われる。北朝鮮とは全く違うにせよ、日本も国内的な理由が成立すると平気で外交経緯を無視する傾向が少々あるので注意するべきだろう。
 もう一つは、これから安保理に持っていくという事で、外交交渉は思いのほか初期段階と見られている事ではないだろうか。実際、経済制裁が効果を発揮するのには時間もかかるし、それを始めるための下準備のステップであるのは事実だ。これから関係国に協力を求めるという手順となる。そこでの反応に応じてオプションが変化していくというのが自然な考え方であろう。ただし、一度事態が動くと初期段階が数年間でその後が週単位で激変するという可能性は充分ある。

 日本は待たされているという印象もあるが、とはいえその一方で国内的な準備も覚悟も足りないのは先日の人権法案の経緯でも示されているように思える。本当は、集団的自衛権やスパイ防止の問題などはとっくに片付けておくべきだったのだが。
posted by カワセミ at 23:25| Comment(0) | TrackBack(1) | 北東・東南アジア
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