2006年07月05日

北朝鮮ミサイル実験に関する所感

 既に大きく報じられているので内容に関して説明の要は無いだろう。北朝鮮がミサイル実験を行った。とはいうものの、報道の熱意に比して直接の情報自体はあまり出回っていない印象がある。

 この実験、全般としてはどのように解釈するべきだろうか。経済制裁で困っている北朝鮮が、何らかの形で事態を動かそうとしたと考えるべきであろう。直接の目的が米朝直接対話であることは広く知られている。北朝鮮の政治的目的を達成させないためには、米国はこの程度のことで右往左往せず、何等外交カードにならぬと平然としておくべきであろう。その意味で今回の対応は正しい。北朝鮮が決定的なミスをすれば別であるが。例えば核実験がそれに当たるだろう。

 ミサイル実験の意義だが、テポドン2に関してだけは確かに良く分からない。だから全くもって私の個人的な見解となるが、これに関しては北朝鮮も失敗の可能性が相当ある事を見込んでかつ実施したのではないだろうか。というのも、純軍事的能力としては、今まで知られている能力を示したに過ぎず、かつ全て海上に落下している。長距離ミサイルの実験は失敗した、というのが米国における第一の報道ではないか。例えば全体を要領よくまとめて報道したものとしてこのワシントンポストの記事があるが、議論を読んだ長距離ミサイルは失敗したと、ある種の安堵を感じられないことも無い。恐らく北朝鮮はそういう反応があることも理解しているだろう。実験は注意深く米国を根本的に刺激することを避けたものと解釈するのが妥当ではないかと思う。また宥和政策に流れる韓国と中国を刺激しないという側面からも問題ない。微妙な点は残るが、微妙に国際秩序の現状維持の範囲で刺激していると解釈するべきと思われる。北朝鮮が意識しているかどうかは分からないが、例えば米国の報道だとイスラエルの兵士が人質になっており、現在進行形の焦眉の急という状況だ。もちろん直接には、ミサイル基地への攻撃は無いとの米国内の政治的動きを受けて安心したのが最終決定に至る重要な要素ではある。

 しかしながら日本の立場ではそうそう気楽なことも言っていられない。今に始まった事ではないが、この北朝鮮問題、常に日本の立場が微妙である。ここで激しいリアクションを起こすと「北朝鮮すら根本的にはやっていない」国際秩序の無法な紊乱者と見られる。これは国際社会に対する影響力が大きい以上、そういうものだと甘受せざるを得ない。これはイスラエルの立場が大きく参考になる。当然の自衛すら時に悪意を持って報道されるのだ。よほどの自制心をもって対応しないと術中にはまると考えておくべきであろう。今回に関して言えば、例えば万景峰号の入港禁止などの経済制裁を開始しながら人道的措置で学生を下船させるというような判断は正しく、その種の人道的原則は手堅く継続するべきということだ。

 当面、舞台は安保理に移る。世界的視野で見れば、日本がどう行動するかが鍵を握る。今回も日本のリアクションで開催したという形を取っている。英仏との協調も開始していたのが適切だったようで、スムーズに推移しそうだ。結局民主主義国の結束で処理するしかないのだが、最終的に武力行使に至るとしても、ユーゴ紛争時にロシアの容認を何とか取り付けたような外交を中国に対して可能かどうかが問題となる。それはロシアが極東地域への関与をどこまで考えているかに影響されるのであろう。

 今後国際社会での論争が進み、多くの国が本格的に厳しい態度を取るとしたら、国際的にはどのような主張でまとめられていくのかということを考えておかなければならない。以下の2つの場合を典型として思考を巡らせるのが良いと思われる。先に言ったユーゴ紛争のような、国際的な広範な人道・安全保障上の課題として対処するのか、個別の主権侵害に対する反撃といったフォークランド紛争型のような対処をするのかということだ。
 ここではフォークランド紛争のように明白な領土上の侵害がないことから、より主権を強く押し出すなら、北朝鮮が決定的なミスを犯さない限り時間のかかるものとなる。前者であれば広範な国際的合意を取り付けるのにやはり時間もかかり、安全保障上の脅威があったとしても人道問題という側面を重視し、北朝鮮国内の人道問題も含めて最終的に責任を国際社会で取る仕組みが確立しない限り、戦争にまで踏み切れない流れとなる。

 結局、関係国がどこまで負担を負うのかというのが判断の基準になるが、日本人はどのような判断を下すのだろうか。先送りという気がしなくもないが。
posted by カワセミ at 19:26| Comment(1) | TrackBack(5) | 北東・東南アジア
この記事へのコメント
ついにやってくれたなーと,実は大半の日本人は呑気に推移を見守っているのではないでしょうか.
いや,今回の政府の行動は良かったと思います.朝一のニュースに載る頃には,すでに安倍ちゃんの声明が出されていて,しかもほぼリアルタイムに情報が公表される.おかげで,7発目も大して驚きなく受け止められた.

事の進行は予想以上で,安保理は24時間程度で開催,中ロは根回し出来ずに日米主導で始まっています.北はもう一発打ちたいようだけど,さすがに中国が押さえ込むでしょう.
ただ,これ以上の展開があるかというと,それは無しと見ます.中ロは,半島の変化を望んでいませんから,この程度では態度を変えないでしょう.しばらくは,中国の時間稼ぎでがあったあとに,議長声明で落ち着くでしょう.あとは,日米間の防衛協調体制の強化ぐらいです.

北の狙いであるアメリカとの二国間交渉には,インパクト不足ですね.それこそ,核実験ぐらいじゃないと無理.逆に,中国の面子を潰したのと,韓国の支援が一時凍結されたのを見ると,ツケは大きかったかな.
しかし,あの北ですから,次に何をするか分からない不気味さが残ります.あの国は,張り子の虎的なものしかないのです.まともに戦争する力も,自国を支える経済力もありません.結局,パフォーマンスでしか生きていけない,悲しい存在なのです.
Posted by toorisugari at 2006年07月06日 21:21
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