2006年06月22日

ハンガリー動乱から50年

 ニュースを聞いておやと思った。確かにこの事件は第二次大戦終結からその程度の時間差で発生したものだ。漠然ともう少し後のことという印象があったのだ。もちろん同時代人として知っているわけではないが、無意識的に頭の中で反ソ連の気風が東欧で決定的になった時期を後ろのほうに思い過ぎていたのかもしれない。プラハの春は別にするとしても。

 今回、ブッシュ大統領がハンガリーを訪問して、当時の民主化への希求を賞賛するスピーチを行ったようだ。これは以前のブッシュの発言で米国がヤルタ会談に関与した事を自己批判するものと同じ文脈であり、ロシアに一層の民主化を促すという意味でも首尾一貫している。(ちなみに以前のここここの2回のエントリで触れている)

 この件は様々なメディアで報じられているが、その関連でいくつか目を引いた記事がある。まず教会という文脈で言及したこの記事、(参照1)かつて聖職者を匿ったという歴史的事実を思い起こさせるのは米国内的にも受けが良いということか。これはサミット開催国としのロシアに対するキリスト教という観点からのアピールも兼ねているのだろう。このアプローチならプーチン始め今のロシアも価値を否定できない。ロシア正教の政府の関係はかつての日本の国家神道に近いイメージと指摘した人がいるが、それでもロシアにおけるカトリックの立場はプロテスタントの右派やイスラムと違っている事もあり、ここでは充分適切と言えるのだろう。対露外交という意味では先日チェイニーが強硬発言で高め玉を投げていることに対して今回のブッシュは穏やかでもある。ロシア・東欧の専門家ライス国務長官の肝いりと思われるが(今回も同行している)アジア外交と違ってこちらの捌きはソツが無い印象である。

 もう一つ、Financial Timesの記事は東欧全般も含めて色々言及している。(参照2)ロシアへの懸念も含めて言及しているのだが率直だ。

In Poland, Eugeniusz Smolar, president of the Warsaw-based Centre for International Relations, puts it more bluntly: "For Poland, security comes from America and development comes from Europe."

Russia's recent efforts to assert itself in the region - especially through its dominant position in energy supplies - has only served to reinforce relations between central Europe and the US. Central European officials, who were among the first to view President Vladimir Putin's resurgent Russia as a potential threat, say they have found a more sympathetic audience in Washington than in Brussels.


 もう少し後でミサイル防衛に関する言及もある。これは私も以前のエントリで軽く触れたが、どうも現地では政治的価値がかなり高く評価されているようだ。

In Radek Sikorski, defence minister, Warsaw has among the most pro-US officials in Europe. The government is urging Washington to locate in Poland a base linked to the proposed American anti-missile shield.


 一大プロジェクトであり米国含めた世界の主要な民主主義国を防衛する要のシステムであることから、これを配備した国を米国が見捨てる事はないだろうという判断か。日本の場合はこの種の政治的機能を必要以上に隠蔽するか過小評価する傾向があるが、外交の厳しさに揉まれていなかった国の反応なのかもしれない。東欧はより自覚的だ。ソ連崩壊後、各国は全速力でNATOへの加盟を推進したのを、当時の私は気持ちは分からなくないがやや過剰反応かなと感じた。しかしそれは全く持って正解だったのだろう。私も気楽な日本人であることに変わりは無い。そして最後のビザの部分、

Personal ties with the US are overshadowed by persistent difficulties in securing visas and Poles, Czechs, Slovaks and Hungarians are united in resenting the fact that they require visas atall.


 これは全く持って間が悪いとしか言いようが無い。OECDのような組織には順次加盟が進んでいることから、米国の9.11以降の安全保障に関する懸念においてはまだ磐石の信頼といかないのだろう。国境管理に完璧を求めても不可能なだけに止むを得ないところか。バルカンの安定も未だ道遠しの感もあり、特にハンガリーあたりは苦労が続きそうな印象だ。バルト諸国も北に行くほど幸運なようだ。安全保障の戦略は世界的な視野が必要だが、治安や移民流入なども絡む生活感の伴う課題では地理的な問題は未だに重要なようだ。
posted by カワセミ at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | カナダ・欧州・ロシア
この記事へのコメント
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/1267845

この記事へのトラックバック