2006年06月13日

中国の兵器輸出に関する日本のアプローチ

 中国との政治摩擦を抱えているのは日本だけではないが、その内容はもちろん当事者によって違う。しかし多くの国から保留無しで無条件に、共通に非難される事があるとすればそれは外交の失敗と言えるだろう。中国の場合何がそれに該当するだろうか?私は、それは非人道的な結果に直接繋がるという意味で、人権上問題のある国への小火器類の無責任な輸出ではないかと考えている。

 通商面での摩擦などの経済問題は、当然各国の雇用と直結するから政治的課題になるが、どの国も多かれ少なかれ産業が興隆して黒字を稼いだ時期はあるので道義的な非難はやりにくい。靖国のような内政干渉的摩擦も、相手が民主主義国なら世論の反応も多様で、概して評判が悪くても絶対悪と言うまでの認識にはなりにくい。武器輸出に関しても、高性能な武器は抑止のためと言う側面もある。欧米のように近代戦争の記憶の熾烈な国は自衛のための武装に否定的ではない。軍備を野放図に拡大して地域に緊張を招き紛争になることはあるが、逆に怠った場合でも発生することはあるからだ。むしろ日本のような武器輸出は全て絶対悪的な論調が珍しいかもしれない。(ただし、日本の歴史的経験と現代の周辺環境に限れば、後述の小火器の問題と論理的には重なり、その認識は理があるかもしれない)また、高度な兵器は各国が大切に扱うという事実の裏返しとしてそれなりに管理されているという側面もある。

 しかし小火器類の輸出は、これを弁護することが非常に難しい。今回アムネスティ・インターナショナルが公式に非難声明を出しているが(参照1)欧州が敏感になるアフリカ地域のみならず、アジア全般でも問題視されている事が見て取れる。そしてこの最後の部分は、結果的に多くの工業国が受け入れることになるのではないか。

As long as China continues to allow arms supplies to the perpetrators of gross human rights violations, the international community must redouble its regulation of joint ventures involving military and dual-use technology in China and must strengthen the application of arms embargoes on China such as those imposed by the European Union and the USA.


 日本のように銃の密輸を厳しく取り締まっている国では実感し辛いが、国境管理に限界がある国ではこうしたことは極めて評判が悪いのだ。この反発は恐らくオーストラリアのそれが一番速いものになるだろう。だが日本としては、例えばここで指摘されているミャンマーのような国に対する輸出に対しても非難するべきだろう。抑圧的な政策が実施されているのは様々な形で報じられている。隣国のタイなどではダム工事問題などでの行動に懸念があるようだ。(参照2)

 ちなみに日本がミャンマーの現政権に対するアプローチは誤りであると米国などから指摘されており、日本でもグリーン氏の発言などは報道されているが、例えばこのワシントンポストの記事(参照3)の後半で触れられているような、インドネシアにおける失敗の部分などはなぜか国内であまり報道されていない。もちろん直線的な民主化へのアプローチを取ったとしてもそれがうまくいくとは限らないが、要は、その国の国民に恨まれている政権なのかそうでないのかを判断すれば良いだけの話であろう。その意味で、今回のニュースなどは政策転換のきっかけにすることが可能であろうし、またミャンマーに限らず、小火器類全般の取引に関して、日本が行っているような港湾管理での阻止のノウハウなどを国際的に提供するような政策も有効ではないかと思われる。
posted by カワセミ at 02:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 世界情勢一般
この記事へのコメント
ミャンマーは中国等より悪質に見えません。
小国で制裁しやすいせいか、ミャンマーに厳しすぎませんか?
恣意的な制裁のように感じます。

自由に情報を集められる国の選挙予想も外れるというのに、その国の国民に恨まれている政権なのかそうでないのかを、どう判断するのでしょう?
Posted by K at 2006年06月13日 21:28
ミャンマーですが、まず元より政治的自由や言論の自由はありません。選挙結果は無視されます。専制政治のお約束ですが政治的活動は政治犯扱いで刑務所行きです。当面人道的に非難されてるのは少年兵、レイプ、強制労働といったところでしょうか。しばしば国際機関やNGOから報告されているだけでも充分な量と思います。最近だと難民問題もありますね。安保理の公式サイトのリンクを例に挙げておきます。
http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=18581&Cr=myanmar&Cr1=

私の価値観では、難民の発生する国の政治を評価することはありません。絶対的な政治の水準としても、アフリカの最貧国でももっともましな政治を行っている国は山のようにあるでしょう。それでもかの国の潜在的水準を非常に低く評価するのであれば、相対的議論として一応そのような論調も成り立つと思います。ですが、私はミャンマーの国民の資質をもう少し高く見ています。

小国だから非難しやすいというのは現実にそぐわないでしょう。むしろ目立つ大国ほど針小棒大の指摘をされることが多いと思います。小国で苦しんでいる人々は国際的関心を高めるのにまず苦労するというのがよくある話と思います。ちなみに中国の評価は難しいです。あの地域では歴史上最もましな政権という表現も出来なくはありません。50年、100年という極めて長いスパンで見れば少しずつ改善されるのかもしれません。それでも現在の政治状況を前向きに評価することは出来ないと思いますが。
Posted by カワセミ at 2006年06月14日 00:13
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「中国:紛争と弾圧を煽る秘密裏の武器輸出」(アムネスティ・インターナショナル)
Excerpt: 【以下全文転載】 アムネスティ国際ニュース (2006年6月11日) アムネスティ日本 http://www.amnesty.or.jp/> -----------------------..
Weblog: ある国際人権派の雑食系ブログ。(仮)
Tracked: 2006-06-16 22:17