2006年04月17日

国連安保理の実態と改革の困難さ

 昨年のG4案が廃案になって以来、安保理改革の話は停滞気味である。確かに案件は山のようにあり、特に今年になってからは人権委員会などの問題を放置して常任理事国入りの交渉など出来る状況ではない。イラン問題で揉め、スーダンやチャドがあの具合では日本も主張し辛いタイミングではある。

 今月、興味深い事に国連次席大使の北岡伸一氏が複数の雑誌に国連関係で寄稿している。「中央公論」に安保理改革の停滞に関する話を、「論座」に安保理の実態や活動の意義を示す内容を寄せている。特に後者のほうが興味深くはあるが、いずれもこのブログなどよりよほど目を通す価値があるので推薦しておきたい。

 前者の中央公論に掲載された内容は、今まで多くの識者が述べてきたことをまとめたものだ。もっとも内容の整理のされ方は大半のものより洗練されている。特に米国、中国、アフリカに課題があったとしている。ただ、ここで北岡氏はG4案が通る可能性はかなりあったとしているが、それに関しては少し甘い評価ではないかと思う。アジア諸国も共同提案国になるにはリスクがあるが投票の際には賛成するとした国は多いという話であるが、やはり肝心の常任理事国が賛成しなければ絶対に通らないのであるからそんな事は言えないのではないか。また、ネガティブな国々にも少しは言及してもいいだろう。スペインへの話は余り進まなかったようだし、カナダの隠然とした消極性(しかし賢く振舞っていて悪者にはならない注意深さがある)も面倒な話だった。
 しかしながら、この外交が無益なものではないとした後半の論述には強く賛同したい。日本もなかなかやるなという評価がニューヨーク周辺であるとしている。それは自画自賛的ではあるが確かに存在感を増すことではあるだろう。現状に問題がある事は多くの国で共通認識があり、日本等を入れることで今後この種の見直し議論が発生することをかなりの期間抑止したいという英仏あたりの考えは国内でももう少し報道されて良かったろう。実際連携も多かったのだから。その他細部の記述には興味深いものもある。

「・・・フランスの行動には、何か外交を楽しんでいるふうが見られた。実際、G4を支持してくれと、多くのフランス語圏の国々にとくに働きかけてくれたが、そういう働きかけによって、実はフランスはその外交能力を再生産し、拡大強化しているのである。」

「確かに安保理改革は難しい。しかしそれは正当な要求である。たいていの国はそれが正当な要求であることを理解している。失敗してもさしたるダメージはない。この点、戦争をするのとはまったく違う。」

「昨年の挫折には、別にダメージは無い。それどころか、実は、得るものが大きかった。なぜなら、正しい要求を持って、これを支持してほしいと言いに行くことによって、世界中の国々の政権の中枢と、深く切り結ぶことになったからである。」


 北岡氏のこれらの言は誠に示唆的だ。思うに日本人は外交を「本来やらずに済ませたいが仕方なくやる苦行」のように考え過ぎているのではないだろうか。孤立主義の伝統が無意識に出ているかもしれない。フランスのようにはなれないだろうが、もう少し政治の世界の日常のように肩の力を抜いてもいいのかもしれない。ここでも必要以上に真面目すぎる気がする。そういう意識を土台に継続的に関与することが前向きな結果をもたらすように思う。

 後者の論座への寄稿はより実際的で興味深い。グローバル・プレーヤーの条件として安保理の実際の活動を説明している。各案件事にリード国を設定し、日本もリード国のときはかなりの役割を果たしている。非常任理事国でも安保理にいるといないとでは大違いのようだ。そして常時参加している常任理事国はやはり強力であるということ。また北岡氏の各国に関する評価見解は面白い。

・論点を整理し、アイデアを出し、議論をとりまとめて行くのはイギリスが断然優れている。
・フランスもシャープな論点を提示し、これに次ぐ。
・アメリカはしばしば洗練さを欠くがさすがにパワフルで、ここまでが別格。
・ロシアはとにかく過去の経験が厚く、議事進行や先例に詳しい。案件によっては日本とも結構親しい。ただ主権尊重でブレーキをかけることも多い。
・中国はロシアに近いがもう少し静かで、自国の利害が絡まない案件ではあまり発言しない。
・非常任理事国では、近年アルジェリアが活躍している。ギリシャは大使が極めて有能であり活躍している。
・日本は常にやや控えめではあるが、言動は安定しており、間違いが無いことで知られる。

 中国の外交行動に関しては昔から知られているものではあり、それ故国際社会では案外紊乱者と見られていない。日本人は別の感想があるのであろうが。また日本には該当案件に詳しくない途上国の追随が多いと言う事も昔から知られている。
 全体として、実質の貢献度では日本は米英仏に次ぐとしているが、これは恐らく妥当なところなのであろう。弱点はフランス語の出来る職員が少ないこととしているが、これもその通りだろう。

 いずれにせよ、外交は何もしないことではなく何かをする事で評価される。日本は現時点でそう悪い評判のある国ではない。しかし、多くの途上国からは苦境を理解する国として評価がある一方、民主主義国一般からの尊重が少し軽めである事、しかしここで示されているように近年の各種案件への対応はかなり評価されていることは示唆的ではないだろうか。国益の角逐という厳しい場である事は周知の事実、しかしそこから結果としてどのような未来を作っていったかという結果が外交の評価となるのであろう。米英仏は非難されることも多いが賞賛される事も多く、しかしそれはいつも静かになされている。そして総合すれば、日本より高い評価となっている事を、もっと多くの日本人は考えておくべきだろう。
posted by カワセミ at 01:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界情勢一般
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