2006年03月06日

スーダン情勢に関する観察(2)及び関連の雑記など

 ダルフール危機によるチャドへの難民流入は以前から問題になっていた。最近はスーダン民兵組織のジャンジャウィードが一部越境して、両国間にまたがる問題となりつつあるようだ。極東ブログさんの方で関連エントリを挙げておられるのでそちらも参照されたい。なおBBCの報道するところによると、チャド政府は公式に非難しているようだ。(参照)

 いつもの事だが、馴染みの薄い国なので外務省サイトからチャドの基本データをリンクしておく。(参照2)昨年の外相来日時のものも面白い。(参照3)世界の最貧国であることは間違いないし、動乱の歴史が続いたが、この10数年くらいは現実主義的な外交で実績を挙げているようだ。もちろん判断基準を上げ過ぎてはいけないが。そして目を引くのは、この国は台湾と国交を結んでいることだ。もちろんそれだけが混乱の原因ではないだろうが、中国から一定の働きかけはあったと思ってよいだろう。
 またその種の議論をするなら、近年チャドの石油開発が比較的進展している事を挙げるほうがより重要かもしれない。エクソンモービルの公式サイトで明確に示されている。(参照4)国境から地理的に遠いDobaなどチャド南部での事業が主ではあり、カメルーン経由のパイプライン事業などが進んでいる。ただ他の地域での埋蔵可能性も模索されているようだ。該当地域でのチャド反政府勢力などへの支援の件もある。こういう言い方は物議を醸すが、経済先進国の民主国家では石油など一次資源を巡っての戦争は引き合わないが、途上国ではしばしばあるというのが現実でもある。

 具体的対処は悩ましい。AUに期待をかけていた人がいるが、そもそも国内の怪しい国々に国外の問題に関与する能力があると考えるほうが無理があったのであろう。資金援助なら日本も出来るが、これほど金の使い方の信用ならない案件も少ないかもしれない。民主主義国がやるとしたら将校など中核部の派遣ということになろうが、フランスの外人部隊とどう違うのかと揶揄されそうだ。中長期的には民間軍事会社の下請け的なアプローチがアフリカ地域では現実解かもしれない。民主主義国が圧力をかける先は自国に籍を持つ企業となる。ただ今回は話の上がってきているNATO関与の類がまだしも現実的であろう。フランスはルワンダでのいきさつもあり、道義的には責任ありだ。いつものごとく面倒な案件はスルーかもしれないが。

 日本などにもダルフールPKOへの部隊派遣などを期待する声があるようだが、治安維持業務となるとすぐに動き辛い難しい案件でもある。幸い資金援助はしていることもあり、チャド政府との関係は良好であるから、フランスなどの協力も取り付けつつまずはチャドに人道支援のための小規模な部隊派遣を行ってはどうであろうかと思う。これは有志連合の形でも良いであろう。個人的にはこの付近を振り出しにNATOにオブザーバーとしての地位を保持しておくべきだと考えるが、この件はまたそのうち。

 中国への働きかけは、これも米国やフランスなどと協力して進めるべきであろう。また日中間でもめている靖国参拝問題にしても、小泉首相の間はいいとしても、次期首相に関しては様々な要因から継続できない可能性は充分にあるので、一定のオプションも持っておくべきであろう。そういう時にこういう人道問題を意識してもいいかもしれない。例えば多国間協議の場でこんなコメントはどうであろう。

 「中国が自国の歴史に関して被害感を持つのは理解できるし、当時人道上の大きな問題であった事は理解できる。現在、靖国参拝は平和を祈念する意図から継続しているが、貴国の誤解を解消するまでにいささかの時間を要するのであれば、現在の内閣としてはそれを控える事も検討している。しかしながら、それには自国民同様他国民の人権も重視するという貴国の態度が示されなければ、我が国の国民の理解は得られないであろう。貴国は政治大国としてスーダンに大きな影響力を持っているようであるし、この悲惨な虐殺を止めさせるための大きな尽力が出来るであろう。貴国の今後の外交を見守った後に日本政府として今後の行動を決定したい」

 靖国参拝問題のような、世界的に見ればつまらぬ問題のために運命が左右される国はたまったものではないが、良くも悪くも大国に振り回されるのが運命だという事実を鑑みれば、それが結果としていささかなりとも人道的な方向に結びつくのなら、多少歪んだ形でも悪くないのではなかろうか。ただここで肝要なことは、今内閣に限るとすることである。行く行かないではなく、人それぞれの信念を尊重するかどうかが問題だからだ。そもそも恒久化を約束するには立法化するしかない。それは禍根を残すし、日本だけではなく、例えばムハンマド風刺画問題のようなものにも国際的な悪影響を及ぼすのだ。
posted by カワセミ at 22:26| Comment(1) | TrackBack(0) | サハラ以南アフリカ
この記事へのコメント
なるほどチャード側にもスーダン側をキれさせる
事情があったって訳ですか。もっとも、この件に
関してチャード側は一方的な被害者だとは思いますが。

それにしても最近の記事群すごいですね。一般教養
どころか、日本の知識人を僭称する連中が目を向けない
部分をみっちりついてきてる感があります。これからも
高レベルのエントリーを通じて、σ(^_^;の頭を
鍛え上げてくださいm(__)m
Posted by おおみや%バイト君 at 2006年03月07日 21:16
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