2006年02月17日

核拡散防止のための様々な模索

 核拡散を防ぐための模索は様々な形で継続しているが、その一環として使用済み核燃料の国際協力の件が進んでいる。これはここ最近加速してきたもので、今月6日時点で主要な原子力大国との国際協力を進めるという米エネルギー省からの提案がなされている。(参照)

 このニュースに次いで、米エネルギー副長官が日本の核燃料サイクルを持ち上げる発言がなされている。(参照2)このこと自体は日本の経済力や技術を考えれば何と言うことも無いが、タイミングとしてはちょうどfinalventさんが日記で触れていたインドの件などとセットで考えるべきだと思う。まぁ、いきなり名指しされても私に振られても困るとしか言いようが無いが(苦笑)

 イランとインドが良好な関係を維持しているというのは日本の立場とやや類似している。ただインドは原子力関係でかくのごときプレッシャーを受けている。この記事はインドを牽制して、イランへの圧力とするのが背景でもあるが、同様に中国やパキスタンにおける核技術の透明化の進展を狙っているというのは上記のロイターの記述でもはっきり書かれているし当然推察されることだ。

 ただこの件、もう少し広い視野で解釈してもいいと思う。歴史的に米国は同盟国や友好国に核武装を断念してもらうために安全保障上の関与を提供し、どちらかというと敵対的な国に関しては、それは比較的大国で国際秩序の枠組みの現実もあることから容認路線だった。だからこそイランの核開発の問題はむしろ新しい種類の問題である、というような内容は以前のエントリでも触れた。今後世界的に原子力技術の発展は継続するので、この種の対処はますます必要となる。とすれば、敵対的な国を枠組に取り入れることはそもそも難しいことから、順序として、まずは中立的で米国及びその同盟国から一線を引きたがっている国を参加させるというのは自然な話であろう。インドに関しては戦略的岐路にある国の一つとして現在のブッシュ政権は特別な関与を意図してはいるが、手法が違ったとしても国際的な枠組に取り入れていくべきという努力の方向性はいかなる政権でも同じであろう。

 日本はとなると、この種の国に政治的妥協の大義名分を付与する存在として振舞うしかないと思われる。それぞれの国が国内で閉じている部分をこじ開けて、細部は他国に公開しないが日本(と裏で米国などの主要な原子力大国)は知っており、正当性に根拠を担保するというのはある話かもしれない。世界全体に透明性を持って相対する事を要求するのは難しいが、一握りの国に公開するとなれば、中間的現実解として想定されてもいいかもしれない。その種の外交交渉は既に始まっている可能性もあるが。中国に関してはフランスが保証するのだろうか。
posted by カワセミ at 23:06| Comment(2) | TrackBack(1) | 世界情勢一般
この記事へのコメント
最近の新しい枠組みの構築は上手く行かないとみます.結局,どんな枠組みであっても,アメリカの優位性を保証するためにルールですし,それに中国が中心になって反発しているわけで,このまま国際協調が崩れていく流れが続くかと.
その後は,建前は各国が平等に扱われるルールができると思いますが,地域大国の優位性を保証する点では大して変わらない.そのうち,核保有国ばかりの世界になり,それこそ”沈黙の艦隊”構想のようなものができる可能性もあります.
日本は,しばらくは現状維持でいいでしょう.技術は保有するが,常に核開発の可能性をもつ.それが,暗黙のプレッシャーになるし,もしものときの安全保障構築になります.
Posted by toorisugari at 2006年02月18日 14:28
>toorisugari様
アメリカの優位性というより、何とか均衡を保っている世界のstatus quoに対するものかと。確かにここらを政治の比較的高いレベルで理解している国は少数派かもしれません。本当に該当するのは二度の世界大戦で嫌と言うほど自国民が死んだ主体的な参加国くらいかも。それでも力関係からはそれで充分な多数派なので現状が何とか持っている、という所でしょうか。
国際協調はある程度の強制力を持たせないと機能しないとは思います。もちろん普通にやると反発が強いですが、ただそのやり方は色々とあり、それこそ様々に模索するという事かと。

>やじゅん様
有難うございます。今年になってからは風邪も落ち着き、まずまずです。
その核保有国の約束というのが曲者で、軍事は不信をベースとするもので、そもそも信じられないです。信じられるとしたら、それは核保有国が核で攻撃され、非核保有国が攻撃されないという実績が一定程度積み重なった時でしょうが、言うまでも無くそんな実績は論外なわけで。今回のイランの件も、市民の広範な支持があるというのが解決を至難にしています。事この件に関しては、冷戦時代に結果的に汚れ役を引き受けていたソ連の存在も意味があったように思います。
インドに関しては、個人的には極めて懐疑的です。恒常的に自己主張の過剰な国が問題を引き起こすのは世界共通です。米国は地域の現状を認めるという性質もあり、その点が今強く出ている時期でしょうか。中国ほどではないにせよ、失望に変化するのは遠い先でないように思います。短期はともかく、長期で見ればその国の平均的な国民の資質が未来を決めるでしょう。その意味でロシアなどは、政治家に恵まれれば随分未来があるように思います。ただ、恵まれない可能性のほうが高いのですが。
エネルギー省に関しては、他の省庁が外国と交渉するよりマシという事もあり、身軽なのでしょう。もちろん振り回される可能性もありますが、同時に関係国はオプションとしては様々なものをキープしておくべきで、米国としても模索するための担当としては悪くないと思います。
Posted by カワセミ at 2006年02月20日 19:59
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