皇室典範改正問題に関して、小泉首相は有識者会議の結果をベースとした強固な改正派として振舞っていたようだ。どのような思惑かは分からないが、そういうのが無かったとしても小泉首相の政治スタンスから大きく離れたものでは無いので、いつも通り強引なだけかと思っていた。とはいうものの、たまには遊びで小泉首相の思惑を考えてみるのもいいかもしれない。
昨年の衆院選は様々な意味で例外的な選挙だった。郵政民営化に関して問うたものではあるが、結果としてある程度議員の政治性向を分ける結果となった。ただ思想的なものというより、損得勘定といった力学が先行した感はある。日本でなかなか政権交代が常態化する状況にならないのは、欧米のように政治思想や哲学をベースとする精神的な基盤が少ないからだろう。むしろ実益主義的な行為が先行する。他にも理由は色々ある。立法府の弱体、行政府の過大な優越が大きな原因だろう。とはいっても立法府が活発な活動をすればそこに権威は発生する。
ここで仮に、小泉首相がもう一段の政界再編を意図しているとしたらどうだろうか。昨年民主党に大連立を持ちかけたところからも、その可能性はありそうだ。それは議員各人が政治的信念によって政党に属さねばならない。利害団体では実効的な活動は出来ないものだ。特に野党の場合はそうと言える。では議員のそのような政治信念をあぶりだす政治的課題は何だろうか?郵政民営化程度では力不足なようだ。
私は、それこそが皇室典範改正問題ではないかという気がしている。情けないことに、多少の事では自らの政治的信念を曲げて立場の違う政党に属するのが日本の議員だ。皇室を課題にすれば、例えば強固な男系制度擁護派が保守政党で集まるという事も可能だし、中道リベラルが厚い形で(自民党か民主党どちらかは分からない)存在するだろう。欧米のそれとは異なるが、それでもかなりの程度政治的ポジションで政党を分ける結果が望めるかもしれない。逆にこれ以外のテーマで「使えるネタ」がまるで無いというのが日本の現実ではないか。
現実には、紀子妃殿下の懐妊という慶事が伝えられ、改正問題は先送りとなった。間が悪いこともあるし、そのようなファクターが入ってしまったという事それ自体が、上記のような政界再編に異なる要素を持ち込む結果となるからでは無いだろうか。
いずれにせよタダの妄想でしかないが、ただ今少し日本人が功利主義的態度を自己抑制しないと、政党政治はこのような強引な方法でしか再編できないという事は事実であろうかと思う。
2006年02月12日
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/1267808
この記事へのトラックバック
皇室典範
Excerpt: 女系の天皇を法的に承認するか、という議論がありました。最近は他にもゴタゴタが続...
Weblog: 日本とはなんぞや?
Tracked: 2006-10-30 22:59
http://blog.sakura.ne.jp/tb/1267808
この記事へのトラックバック
皇室典範
Excerpt: 女系の天皇を法的に承認するか、という議論がありました。最近は他にもゴタゴタが続...
Weblog: 日本とはなんぞや?
Tracked: 2006-10-30 22:59
だとすると、保守かリベラルかを区別するのは、心の問題(靖国参拝・皇室典範)だというのは一理ありますね。
リプライ遅れました。コメント有難うございます。
その見解は無難な所だと思います。まぁ、日本は治安条件の良さとか色々あるのでもう少し縮められる余地があるかもしれませんが。
心の問題というのは、例えばこんな例えはどうでしょうか。グローバル化の進展で、日本のやや能力の低い層が外国の能力の高い人々に職を奪われたとしましょう。それをある程度止む無しとするのか、日本人を優遇するべきとするのかと。(もちろん、こういう言い方をすると前者のほうが道義的に聞こえるが、必ずしもそうではない)
やはりある種の道義へのこだわりといいますか、社会のありように関する信念が無いと確固とした政治集団は生まれないと思うのですけど、日本は功利に流れてある種の自己犠牲的な面があんまり無いかなとは思います。それを代表していると称するのが社民党や共産党である点が日本の不幸でしょうか。功利だけなら結果的に落としどころは一つに収斂するので、一政党が常にマジョリティというのは筋が通りますし。