2005年12月10日

自民・民主が大連立したとしたら?

 9.11の選挙で圧勝したにも関わらず、その後小泉首相が民主党の前原代表に大連立の可能性を打診していたというニュースが報じられている。(参照)政治に関心のある者なら誰でも興味深く感じるところで、例えば雪斎殿もエントリしている。私は、このニュースは小泉首相が選挙制度の改革を指示したというニュース(参照2)とセットで考えると分かりやすいと思う。

 この衆議員300、参議院150で重複立候補を無くすというのは、個別の言辞はともかく、明らかに衆議院の単純小選挙区化を目指したものと言えないだろうか。そして参議院は恐らく比例を50程度残し、選挙区を100程度にするのであろう。この前提で近未来の選挙の状況を考えるとどうなるだろうか。

 恐らく衆議院は2つ程度の大政党しか残らないだろう。そして次の選挙前に仮に民主との大連立が成立していたらどうなっただろうか。恐らく民主党の左派勢力は社民党などに吸収されるような形で分裂するだろう。しかしこの政治勢力は小選挙区で勝つような力を持つことは不可能であろう。そして前原代表に代表される民主党右派を抱えた自民党からは保守勢力が分裂し、政界における野党の需要を満たすという筋書きになりはしないだろうか。ただ、この保守勢力はよほど人材に恵まれないとマジョリティを取りきれない。参議院では社民・共産勢力も残るので、参議院では自民党が中道ポジションに大きく存在し、衆議院では右側に野党を抱えた逆55年体制というような趣になるのではないか。もちろん保守勢力の野党が一定の人気を得れば、二大政党化は成立するだろう。

 これはマスコミ対策という面もあるかもしれない。取るに足りぬ支持しか集めない政党でも、衆議院で一政党を抱えていれば特段の扱いとなる。公明・社民・共産は現在破格の扱いだ。これは政治勢力そのものよりマスコミ自体が問題なのだろうが、むしろ自立した力量を備える政党の中を報道する方が重要だろう。政治勢力の変遷はそれを促すかもしれない。

 小泉首相の政治ポジションに関して、以前関連するエントリを書いた。そしてこの小泉首相の中道かつややリベラル色の人権重視、非伝統主義という政治性向を持つ人材は自民党には案外思いつかない。実は前原代表の方が政治的距離が近いだろう。小泉首相は前原氏の個人的資質に関して高く評価する発言もある。全体的に見ても民主党右派が小泉首相の直系という気もする。自分が辞めた後、路線を引き継ぐ人間が欲しいと思っての動きではないだろうか。その意味でも小泉首相は、歴代自民党の首相の中でも例外的な存在なのかもしれない。日本人に自覚の無い状況での仮想的な政権交代と言えるのかもしれない。しかし、それは国民が選挙で選び取るものであるべきだったという思いは残るのだが。
posted by カワセミ at 18:45| Comment(6) | TrackBack(3) | 国内政治・日本外交
この記事へのコメント
小泉首相が選挙制度の改革を指示したというニュースは僕も注目してますが、全然話題になってないですね。過去に選挙制度が変わるたびに大騒ぎしたことを考えると、何故こんなに静かなのかと思うのですが。
Posted by Baatarism at 2005年12月10日 20:05
匿名希望の時事ブログの匿名希望様、トラックバックが重なっているようなので、一つ削除しておきます。
Posted by カワセミ at 2005年12月15日 01:06
民主党にとってすれば、郵政民営化が一番大きなチャンスだったのではないかと思いますねぇ。
あの時、民主党(いや社民でも共産でも良いですが)は最高のポジションにいたのではないかと思うんですよ。
自民党を大きく割ることができる機会すらあったんではないかなぁとも思いますね。
郵政民営化法案なども、小泉政権へある程度の協力をする見かえりに、、とかね。

私は郵政民営化には賛成というか、郵貯なんてバラバラ分解して外資に売ってしまえと考える非国民なので、こんなこと考えるのかもしれませんな。

ところで、都市部での保守政党の可能性についてはどう御考えで?
いや、私が投票する政党がなくて困っているわけでは……ありますよ……OTL
Posted by おきゅきゅきゅきゅ??@例によって(ry at 2006年01月19日 18:28
おひさです。

自民党の右に政党を作るのは、自民党自体が中道左派に近い線まで行かないと難しいでしょう。極右政党は日本ではいつも色物扱いです。小泉首相+前原党首は実はその中道左派に比較的近い線となりそうなのですが、ただ自民党議員は自民党をなかなか出て行きません。今回の国民新党などがもっと大きいサイズで、安倍氏のような国民的人気のある政治家に恵まれれば都市若年層などを皮切りに支持が広がるかもしれませんね。

ただ、現実問題としては、やはり自民党の左派が民主党に入って、前原民主党が社民もどきの連中を叩き出すしか目がないのでしょう。その結果の自民党はおきゅさんの趣味に合わないでしょうね。

西欧的文脈のリベラル勢力が弱体なのが日本の悲劇でしょうか。日本人自身は自らの身勝手さや貪欲さに無自覚のようです。(まぁ、日本に限りませんが)「通商国家は偽善に走りやすい」との言を最近聞いたのですが誰だったか。しかしそうだとしても、今の日本は極端にも思えます。
Posted by カワセミ at 2006年01月20日 00:06
>カワセミ氏
基本的には左派(ポリティカルコンパスでも左でした)な私から見ると、今の民主党や社明党は右派に見えることが問題ですね。特に経済政策。
労働組合は何やってんの? ってことになりますが。

まぁ、みんなやってること同じに見えてるだけでしょうけど。
というか、早く安全保障問題から自由になった左派政党ができて欲しい…
そして、経済政策については……一回クルーグマンの爪を煎じて飲ませたい。

>自民党の左派が民主党に入って……
やっぱこうなりますか。
自民・民主合同政権→自民結合→保守派離脱
とか考えてみましたが、ありえねーと思いますた。
今回の国民新党にしてもそうですが、結局地方地盤の保守政党はあり得ても、都市政党としてはやはり考えにくい……ですかね。

>偽善
今の日本人に関しては、偽善というよりも偽悪に見えることもあります。
というよりも、平気で他人を踏みつける(確信犯的な)サドの多いこと多いこと。
世の中ってそんなに酷いものだったっけかなぁ……と思うことしばし。
まぁ私としては、安心して偽善をする幸福に浸れる日を待っているのです。これでも。
Posted by おきゅきゅきゅきゅ?? at 2006年01月22日 16:37
経済政策に関しては、若いエリートの被害者感情をどのような形で満足させられるか、という問題が背景にあるように感じます。ただ、何だかんだいってリフレ政策で実質救済みたいな形をとるのかもしれません。団塊の世代の有権者としての割合が低下するまで大筋変化は無い気もします。

移民が急増でもすれば、都市部を中心に治安悪化、極右政党もそこそこ勢力を伸ばすとなるでしょうから、そうなるとまた別の展開もあるでしょうね。

>自民・民主合同政権→自民結合→保守派離脱
>とか考えてみましたが、ありえねーと思いますた。

選挙でその他の政党が壊滅的打撃を受け、出来上がった政権の執行部が左派的かつ強引な政策を採る、というルートしかないでしょうか。または上記のような移民排斥コース。

>偽悪
いや、結構すさんできてますし(^^;)
対外的にはまだまだ偽善かな。悪いところもありますが良いところもあり、その観点では欧州の一国と変わらないような気も。
Posted by カワセミ at 2006年01月24日 00:08
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