ハワイ沖で米国のイージス艦Lake Erieが初めてミサイルから分離後の弾頭を撃墜することに成功したと報じられている。(参照)重要な進展だが、米国内では多くのステップの一つに過ぎないと考えられているのか扱いは大きくないようだ。むしろ欧州配備に向けたニュースに関心が集まっているようだ。(参照2)今日は軽く触れておきたい。
欧州に対する攻撃の防衛のため、ポーランドにミサイル防衛のための基地を設け、主として中東やアフリカからの攻撃を防ぐことが検討されているらしい。大陸間弾道弾に近い中距離ミサイルが主なターゲットと見られるが、もう少し短距離のミサイルについてはイタリアやスペインも想定にあるようだ。
ミサイル防衛は抑止のための核兵器とは違い、防御のみであり、しかも100%の防御にはならないので役に立たないという意見がある。以前のエントリでも述べたが、これは議論する観点がずれており意味が無い。抑止は核兵器で取るにしても、抑止不可能な相手がミサイルを持つ可能性はあり、とにかく何がしかの防御の手立てが必要ということだ。この抑止不可能な地域の代表が中東であり、その意味で本命と言えるかもしれない。また近年の中国の国内的混乱を見ても、以前に述べた政治的効果というのも思った以上に意味があるかもしれない。
ミサイル防衛の技術は日本の寄与も大きい。少なくとも海上配備型は地中海に展開する米国のイージス艦で使用される。話をする相手が米国だけならともかく、例えばオーストラリアから何がしかの支援の要請があったとき日本はどう反応するのだろうか。この種の技術や装備を有している国が世界に数あるわけでも無い。国内の集団的自衛権の議論を見ていると相も変わらず浮世離れしているが、そういう事も含めて考えなければいけないだろう。
2005年11月18日
この記事へのコメント
以前のエントリで「政治的効果というのがある。抑止が成立する国であれば、迎撃効果が少ない段階でも相手が恫喝が通用しないと断念し、政治的に穏健な主張にシフトする可能性がある。それと、防衛網で同盟国を統括することそれ自体が集団安全保障の枠組が機能していることをアピールできる」と、おっしゃってみえました。これは、大切な視点だと思います。これからも、よろしくお願い致します。
Posted by 屋根の上のミケ at 2005年11月19日 01:14
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