2005年11月09日

フランスの暴動に関する個人的な覚え書き

 フランスの暴動に関しては、ほどなく収まるといいなという希望的観測もあって軽い扱いにしていたが、やはりこの件はひっかかるので自分がこの時に何を思ったか備忘録も兼ねてエントリにしておきたい。今回の事件の構図だが、大雑把に捉えるとこうではないかと考えている。
 まず、移民一世は自らの行動に自覚的で、それなりにフランス社会との調和を目指していたと思う。これは旧植民地の北アフリカ諸国が多いことからも推察できる。そしてフランス社会はこういう層をターゲットとして社会制度の最適化を図ってきた。しかし、二世となると話は別となる。この変化への対応が甘かったというのが問題なのだろう。

 これは在日朝鮮人の問題に比較すると興味深い。日本の場合は、朝鮮との絶対的な文化距離はやはりそれなりには近かったということ、そして人種的に近縁で外見上の区別はつきにくい事が大きい。日本語に堪能で外見上の区別がつかなければ表面上の摩擦は少ない。フランスの場合は本質的に文化主義的で、例えばフランス語ペラペラな黒人への風当たりはそれほど強くも無い。しかし他地域の慣習を持ち込もうとする部分に反発する。この付近は日本も近いところがあるかもしれない。そして北アフリカ出身の移民二世はそれなりの文化慣習を親の世代から引き継いではいるが、フランス社会でそれを韜晦する事に関しては(絶対年齢が若いということもあり)未熟だったということだろう。にもかかわらず、社会に対する要求水準としては、親の世代とは変化して他のフランス人と大差なくなっているだろう。日本においても在日朝鮮人の外見が日本人と明らかに区別がつくものであれば、周囲の人間が注意を払うことで水面下にあった問題が顕在化し、今回のフランスのような問題が発生したかもしれない。

 今回の問題、米国から見れば、バグダッドと比較するような煽り報道を除けば気楽に見えるのだろう。ちょっとした暴動ですぐ死者が出る米国社会に比べれば可愛いものだと。しかし、米国には悪いが、それぞれの社会の様相で基準は変わってくる。フランスにとってはやはり大問題だろう。米国のアフリカ系黒人は出身母体との文化的紐帯をほとんど持っておらず、その意味で「純然たるアメリカ人」だ。国家への不満は大きいが忠誠はむしろ強いかもしれない人々である。フランスの場合は国家の文化的統合の危機としての認識だ(むしろ暴動当事者の思惑が二の次と言えるかもしれない)全く違う種類の問題を並べて議論している印象がある。そしてフランス人に取って見れば、文化的一体感こそが命だ。

 またこれは私が断片的な報道に接した印象でしかないが、英米であれば、サルコジ内務相の政治的評価はそれほど下がらないと思う。そしてド・ヴィルバン首相はむしろ問題から逃避したと見なされて評価を落とすような気がする。ただ、フランス国内的には様々な要素が絡んでいるので何とも言えない。
 フランスで今後問題となるのは、被害の大きさそれ自体より社会の意識の変化だろう。もう少し補足すると、政治の場での力学の変化だ。誰もが百も承知でいたが言い辛かった事がいささか言えるようになるのだろう。その結果がどうなるかに関しては何とも言えない。ただあの国は、英米と並んで国民はそれなりに骨のある国だ。どういう具合に世界に対して「いい格好」をするか、見守りたいと思う。何だかんだといいながら、私はあの国が好きだから。自国のように欠点も含めてとまでは言い切れないが。
posted by カワセミ at 00:32| Comment(3) | TrackBack(0) | カナダ・欧州・ロシア
この記事へのコメント
>「いい格好」をするか

わが国では在日の問題だろうに。だれも本音で語ろうとしない。ということで意味のあるブログと思う。しかし、現状の言論やジャーナリズムの貧困はどうしようもない。
Posted by toshi at 2005年11月09日 10:52
在日朝鮮人の問題ですが、ある意味彼らは勘所が分かっているのでしょう。このくらいまで日本人は許容するという前提で、ギリギリまで狙っているというのが現実に近いかと。面白くは無いですが、世界的に見れば良くある風景です。ケベック州なんかなまじ文明的なだけにタチが悪いと言えなくも無い。

ところでド・ヴィルバン首相は評価を戻したようですね。やはり機を見るに敏か。問題はいずれの政治家にとってもその先なのでしょうが。
Posted by カワセミ at 2005年11月10日 02:18
>在日朝鮮人の問題ですが、ある意味彼
>らは勘所が分かっているのでしょう。

駅前と駅裏に在日朝鮮人の不法占拠地帯を抱える某県の県庁所在地出身ですが、現在もかなりとんでもない要求してるにも関わらず、自治体が表に出ないよう努力してる感じです。

しかし、それも今回の選挙で権力の構造がガラリと変わったので、いろいろ動きが出てくるかもしれません。
Posted by のだめ at 2005年11月10日 16:08
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