2005年10月28日

国連安保理改革の行方(10)

 米国が、常任理事国入りを希望している日本に対し、多くの加盟国の賛同を得られる案を共に協議するという話が報じられている。いつもの事だが、雪斎殿のエントリはタイムリーでポイントを突いていて参考になる(参照)。
 私はこのテーマ関連のエントリで何度も述べているのだが、日本の常任理事国入りには賛成だがG4案には反対という米国の発言はそのままの意味で解釈すべきだろう。しかしながら日本国内においては米国は非協力的との印象を持つ人もおり、極端な意見となれば、米国も本音では反対で中国との裏取引で潰したのではないかという言すらある。誤りなのだが、米国としては日本の不信感を払拭する必要を感じたのだろうか。いずれにせよ、世界第二の経済大国をここまで面倒見なければならないとは、米国も気の毒なことである。
 これに対し、G4案推進の今までの経緯から慎重な対応を考える人もいるようだ。しかしながら現在G4案が通る可能性がゼロに近いことは周知の事実である。この問題については愚直ながら正攻法で進めるしかない。私は以下のような手順が重要ではないかと考えている。それぞれかなりのオーバーラップが存在するが、大まかな流れとしてはこのように進めるのが良いと思う。

・G4案失敗の総括
 この案はG4のどこか特定の国が執着したのかもしれない。しかしながらそれ以外の国から見ればG4の結束を示すものであり、四ヶ国全てに責任があることは明白である。この案に賛成するように世界の多数の国に強い要望を出し、中には日本も含めたG4からの脅迫という印象を感じた国もあるかもしれない。それであるが故に、結果として賛成を得られなかった案のどこが悪かったかを総括するのは重要である。それぞれの国がはっきりとしたコメントを出すべきだろう。できれば指導者の直接的な発言がより良い。また、G4のそれぞれの国がどのようなコメントを出すかによって、再度行動を共にするかといった、今後の外交展開を考慮する材料の一つともなる。また言うまでも無いが、賛同してくれた国に謝辞などを述べるといった事は大事だろう。

・G4諸国の外交方針の確認
 これは理念、あるいは建前の戦いとも言える。そもそも国連改革の一環としての安保理改革として、安保理をどうしたいのかというそれぞれの国の理念がこれまでは見え辛かった。単にステータスを占めたいのか、それとも常任理事国になった後に何か今までの安保理と違ったものにしようというビジョンがあるのかという事である。現実を考えれば、自国の立場が少しでも有利になればという程度の話かもしれない。しかし各国は建前を大声で主張してきた。それを再確認するのは重要だろう。そして日本はこれまで同様に負荷を負うと言うことをはっきりと宣言するべきだろう。単なる自己主張の延長である国は、この段階で方針が違うとして距離を置くのが良いだろう。次の行動での共同行動とも関連してくる。そして率直に言うと、インドはこの付近で怪しいかもしれない。

・改革された安保理における行動に関して
 これは米国の考え次第で大きく変わるだろう。米国は国連安保理をどうしたいのか決めかねているようにも見える。元々の要求水準が低く、セレモニーに過ぎないと考えているだろうが、機能すればそれに越したことはないとも思っているだろう。そのため、ある程度同盟とのオーバーラップを意図する方向で動いてはどうだろうか。
 第二次大戦直後は、これを本気で安全保障の強制力の源泉と各国が考えていたフシがある。軍事委員会などもあったようだ。しかしこれはあっという間に機能しなくなった。それを意図するというほどではないものの、小規模でも常設の多国籍部隊の設置を常任理事国の主導で構成すると提案してはどうだろうか。資金協力は当然である。そして参加はあくまで有志とし、しかしながらその貢献を毎年総会に報告するなど、数字で残るような枠組みが良いだろう。

・米国と各国への最終的な説得方針
 米国を説得するとすれば、「安全保障に関する価値の共有」と、「確実性と長期の安定性」をキーワードにすると良いと思う。前者は、安全保障に関する考え方の違う事から、しばしば現在の安保理が機能しなくなる事を説き(例えば以前のエントリで述べたような感覚の違いがあると紛糾する。6ヶ国協議の紛糾も機能しない安保理と共通点があり、参考になる)価値観の共通する、かつ負荷を負う能力と意思のある国とするべきだろう。具体的に言うとドイツになると思う。そして、この拡大安保理のメンバーは比較的安定性がある。旧G5という、経済大国が含まれ、長い間米国と同盟を結んでいた国でもある。現在の安保理常任理事国の問題は大半中国、次いでロシアにあると思うが、ロシアを極力引き寄せ、孤立を避けたい中国を黙認に持っていくというのが近未来の風景として安定感があるだろう。不確実の脅威に対応しなければならない現代で、伝統的な価値観を共有する安定した確実な枠組みは価値がある、と主張してはどうだろうか。

 そしてこれが重要だと思うのだが、多くの国を説得可能な案が現実には無い以上、「あの付近の国なら仕方が無いだろう」というような、賛成というよりは容認を目指すアプローチが奏効すると思われる。米国は不安定の弧の戦略からインドを重視しているようだが、この選択は案外後で苦労する結果になると思う。
posted by カワセミ at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界情勢一般
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