まず、映像配信ビジネスの対象として、典型となるものを複数挙げてみたい。
(1) ハリウッド映画など、旧来はDVDのようなパッケージ販売の対象となるもの
(2) 今回取り上げられたミュージッククリップのように、従来パッケージでは扱いにくかった短時間・多種類のコンテンツ
(3) テレビドラマなど、家庭用録画機のタイムシフト需要を補うような、テレビ番組コンテンツの販売
この3種類は仮に想定したものであるが、これにより一つの傾向が見えてくる。世界的な普遍性は(1)が高く、地域事情の影響は(3)が受けやすい。(2)はその中間だが、最終的な市場としては大きくは無いかもしれない。(1)(3)どちらかを前提としたビジネスに吸収される可能性がある。
ここでビジネスの方法論として、(1)から始めて全世界を覆うような、例えばamazon.com的アプローチでいくのか(Appleがこれに相当する)(3)から始めてある国/地域でがっちり基盤を固めて、(1)のビジネスもその地域では従わざるを得ないようにするのか(CS放送におけるSKYPerfecTV!あたりがやや近いか)の2種類が考えられる。これは主体となる企業がどのようにビジネスモデルを考えるかだけではなく、周辺環境にも依存する。例えば国内の放送業界が中途半端に抵抗しモタモタしているとAppleのやり方に飲み込まれるだけだろうし、日本国内に限ればタイムシフト需要が強いのでそこと連携したビジネスが早期に成立すれば囲い込める可能性がある。企業はその付近の読みや働きかけも含めて進めなくてはならないが、ここでは双方のアプローチを考えてみる。
まず、世界的な基盤を築くやり方としては、ダウンロード販売のインターフェイス/保存先として受け側としてPCを使う事は動かないと考えるべきだろう。となれば、誰でも思いつくが家庭用PCの標準OSであるWindowsに目が向く。ブラウザのときのようにダウンロード環境の標準となるソフトをOSに組み込んでおく(今でも多少あるが)という手がある。PCメーカーに呼びかけて最初の利用は無料にするとかいう手もあるだろう。ただRealへの出資などやり方も中途半端で、近年のMSはやや迷走気味にも見える。この路線にはややバリエーションがある。Apple的にダウンロードそのものではそれほど利益は出ないが端末ではそこそこ儲かるというような場合、端末機器のバリエーションの無さを突いて、基幹部品を全体需要を読んで一括調達し、原価を下げるサポートをしつつ標準にのっとった機器を各端末メーカーに作らせるという方法はあるかと思う。もちろん初期段階では携帯電話のように端末価格の肩代わりは検討しても良い。それとは逆に端末で利益を挙げるなら、最初はコンテンツ販売を安くして利用者を増やす努力に注力となるだろう。また端末を特定するならMSとSONYの組み合わせくらいしか成立しないだろう。MSはSONYと組みたがって声を掛けているという話を聞いたことがあるがどうなっているのだろうか。
これとは逆に、特定の国/地域を固めて進める場合はテレビ放送が最初のターゲットになる。北米ではTiVoあたりからステップを踏むだろうし、欧州とアジアについては、偏見を交えて書くと欧州では早期にビジネスが成立するとは思い難いしアジアでは極端にローカルな方法論に傾く可能性が強く予想しにくい。というわけで日本国内に限って考えてみる。この場合、まずは片端から番組を録画してメディアを大量に消費するような旧来のAV機器マニアを、片端からファイルをダウンロードしてHDDを埋めていくダウンロードマニアにするのが当初アプローチとして良いだろう。それに加え、一般人をターゲットとした場合は、本放送の当日や翌日にはすぐにファイルがダウンできるような体制を整えるべきだろう。その場合の販売インターフェイスとしてはPCで見るEPG画面が最も早いだろう。特定の番組表サイトとか、またはDVDレコで言うのなら東芝のRDシリーズあたりが押さえている市場が該当するかもしれない。RDで録画できなかった場合、フラグか何かでレコ内部の状態を検知して、ダウンロードリストに自動的に加える、などのアプローチはいいかもしれない。ダウン先のメディアはPCとDVDレコ双方を指定できれば家庭用としては完璧かもしれない。またこの方法だと特定のレコメーカーで囲い込めるのでレコーダー側での利益も上げられる可能性がある。もちろん放送局側の協力は必須である。建前上「標準」を提供しているという形に持っていく政治的対応のほうが課題が多いかもしれない。
AVマニアの多い国でもあるし、少しばかり大胆になるだけで、かなりの利益の挙げられるビジネスになると思うがどうか。放送局は自前のコンテンツをもっと有効利用できると思う。現在の地位は特権であり、維持するだけでも大変な時代だと思うのだが。もっとも、どう転んでも今のような圧倒的な主導権は薄れるだろう。
例えばアニメ番組を現在のように馬鹿高いDVDで売らずに、iTMSで数百円で売るようにすれば、結構人気が出ると思うんですけどね。アニメは権利の問題も少ないはずだし。
<a href="http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0510/18/news024.html" rel="nofollow">http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0510/18/news024.html</a>
これらの携帯端末向けに新しいメディアが誕生して、日本の反日メディアの影響力がその分薄れるのなら良いのにな??とちょっぴり期待したりもします。
それにしても靖国騒ぎの折、超然とこういったエントリを上げるカワセミさんをつくづく羨ましく思います。私などは下世話なものでくだらんと思いつつもついつい構ってしまいますから(汗)
音楽はシングルが伝統的に割高で、アルバムは無駄な曲が多い感もあるのでビジネスチャンスがあったのでしょう。現在は少ないですが、演奏という理由で同曲異盤が極端に多く、結果廃盤も多いクラシックとか、売上としてはマイナーなものもカバーできるのがこの種のオンライン物のメリットかなと思います。映像ファイルとなればそれ以上の要素があるかもしれませんね。使い捨て方面でもその日のニュースクリップとかが成立するかどうか、興味深いです。
>まったり様
売れるための要素は何かと考えると、それはキー局に乗ることだと考えればまだまだ大筋は動かないでしょうね。ハリウッド映画が全面的に移行とかそんな形になれば違うのでしょうが。スポーツ中継あたりは完全中継の需要から今でもCSが強いので、ブロードバンドに適合してるかもしれません。
靖国の件ですが、せいぜい雑記で一言軽く触れるくらいかな?