2005年09月21日

6ヶ国協議における米国務省の発言に関して

 このブログを見ている人なら多くの人が目を通しているとは思うが、かんべえさんの昨日の日記('05.9.20分)はなかなか興味深い内容が含まれているので参照されたい。私の受けた印象は少しばかり違うので、当たっているかどうかはともかく所感を述べてみたい。別に反論というわけでもないが。

 まず、米国のライス長官への質疑応答はこのようなものだ。米国の政治家、それも高官となれば無駄な言葉はそうそう使わない。この種の公式声明を読むと、少なくとも後で見て嘘は言ってないしポイントは突いているということは多い。ましてライス氏となれば。全体の半ばほどのこの部分はかなり気になる。

QUESTION:
Madame Secretary, you didn't want to discuss it up until now. I mean, does "discuss" mean --

SECRETARY RICE:
When the North Koreans have dismantled their nuclear weapons and other nuclear programs verifiably and are indeed nuclear-free, when they are back in the NPT, when they have gotten into IAEA safeguards, I suppose we can discuss anything.

QUESTION: (Inaudible.)

SECRETARY RICE: I suppose we can discuss anything. But I would just have you take note of the fact that the North Koreans asserted their right to peaceful nuclear uses. All that is done here is that we've taken note of that assertion and then a number of the states have made very clear what the sequence is here. The sequence is dismantling, NPT, IAEA safeguards, and then we can discuss. Because I don't think there's anyone who is prepared to try to go back to a circumstance under which we're debating sequences.


 NPT体制に戻るのがポイントと考えているらしい。これから先は私の想像になるが、これは中国に対する配慮ではないかと思う。中国の立場に立てば、外交上譲歩する相手としては日米は国内事情を考えるともっともやり辛い。つまり、譲歩するにしても、日米相手ではなくNPT体制を相手にしたいからではないか。例えばEU諸国などの意見が入る。今回ロシアも今日の北朝鮮のゴネに釘を刺しているのもそのサポートではないか。

 ヒル氏の公式声明は後半の具体例が重要だろう。

The United States desires to completely normalize relations with the DPRK, but as a necessary part of discussions, we look forward to sitting down with the DPRK to address other important issues. These outstanding issues include human rights abuses, biological and chemical weapons programs, ballistic missile programs and proliferation, terrorism, and illicit activities.

The Joint Statement accurately notes the willingness of the United States to respect the DPRK’s sovereignty and to exist with the DPRK peacefully together. Of course, in that context the United States continues to have serious concerns about the treatment of people and behavior in areas such as human rights in the DPRK. The U.S. acceptance of the Joint Statement should in no way be interpreted as meaning we accept all aspects of the DPRK’s system, human rights situation or treatment of its people. We intend to sit down and make sure that our concerns in these areas are addressed.

The Joint Statement sets out a visionary view of the end-point of the process of the denuclearization of the Korean Peninsula. It is a very important first step to get us to the critical and urgent next phase - implementation of DPRK commitments outlined above and the measures the United States and other parties would provide in return, including security assurances, economic and energy cooperation, and taking steps toward normalized relations.


 ここで日本の立場を思い出して欲しい。拉致問題の陰に隠れがちだが、日本はミサイルと化学兵器の問題を含めた包括的解決を一貫して主張し続けており、むしろ米国のほうが妥協しがちだったかもしれない。その単語が含まれていると言う事は、日本は少なくとも米国に対しては名を捨てて実を取ったとは言えないか。そして人権問題もきちんとコメントしている。やはり拉致問題は、韓国の拉致被害者や北朝鮮の国内統治も含む、広範で包括的な人権問題の一環として取り扱うべきなのだろう。
posted by カワセミ at 23:36| Comment(5) | TrackBack(2) | 北東・東南アジア
この記事へのコメント
韓国の拉致被害者問題はどうにかならないものかと思いますね。韓国政府はこの問題に冷たすぎます。
韓国にある日本への対抗心を生かして、「日本政府はあんなに拉致被害者のことを考えてるのに、韓国政府は何故時刻の拉致被害者に対してこんなに冷たいんだ」という世論を盛り上げられれば良いのですが。盧武鉉政権の人気が落ちている今、ハンナラ党がそういう路線を取れば良いのにと思います。
Posted by Baatarism at 2005年09月22日 09:54
韓国はGDPとか軍事力とか、とかくスペック的なものに拘る反面、人権とかいうやや形の見えにくい価値を軽視する傾向がありますね。日本も欧米に比べ若干その傾向がありますが、それがひどくなった感じかと。過去のエントリにも書きましたが、民主主義国の広範な連合を形成して囲い込むしかないのでは。
拉致問題だけでなく、北朝鮮問題はロシアを確実に引き込めるかどうかがポイントですね。多分その付近が分岐点になるでしょう。その意味でもドイツの選挙は重要でしたがしばらくの停滞は避けられないようです。
Posted by カワセミ at 2005年09月22日 22:12
はじめまして。
かんべえさんは、日本に対する言及がないと書いていましたが、単純に順番上、最後のリマークが韓国、ロシアと中国に対する謝辞を述べて、その次に米国が続いたというだけの話のような気がしたのですが、どうなんでしょうか。
ヒル氏の発言は、記者会見のものではなくfinal plenaryの場での発言なのでそう考えた方が妥当なような気がします。

ただ、アルファベット順で発言したとすれば、日本は韓国の前に発言しているので、確かに日本は外れた形になるのでしょうが。。外務省ホームページを見ますと、佐々江局長は中国に対する謝辞を同じ場で述べているようですし。
Posted by hare at 2005年09月23日 06:58
 結局、今回の六カ国協議における日本の目的はなんだったのでしょう?
 協議の座礁と緊張のエスカレートを回避したいのであれば、拉致問題へのこだわりには限度をもつよりほかありません。他方、日本が拉致問題での協力をアメリカに呼びかけるのであれば、アメリカが武力行使に傾いたときにこれを宥めるべき立場にはありません。
 日本政府は自分たちが何を達成したいのか、についての明確なビジョンをもっているといえるのでしょうか?
Posted by 妖怪 at 2005年09月24日 23:06
完全に私の推測でしかありませんが。

>hare様
敵方に気を遣う余り、気を遣わなくていい部分に大雑把になるといういつものアメリカの悪い癖では?イギリスやオーストラリアに対する配慮の無さを考えれば、対日はまだしも神経細かいほうかと。

>妖怪様
拉致問題解決が一朝一夕に行かないことは日本政府も良く分かっていると思います。解決の糸口があるとすれば、北朝鮮以外の五ヶ国、最低でも韓国以外の四ヶ国がまとまって北朝鮮に明確な圧力をかける段階に至った時でしょう。そのステップへの道筋としてNPT体制への復帰を促しているのでしょうし、このエントリで挙げている国務省の発表でも最初の一歩というような言い方をしていますよね。そして、今回の日本はそのサポートに徹したと言う事では無いでしょうか。
逆に、核問題で北朝鮮が妥協して本当に核廃棄してしまうとかなり厄介です。少なくとも韓国が山のような援助をするという可能性はありますし、日本が止める方法が難しい。その意味でも、「自国の被害者だけでなく」広範な人権問題として、世界の主要な民主主義国を巻き込んでいく必要があるのではないかと思います。少なくとも米国の北朝鮮人権法と連携するものを国内で立法しておかないといけないでしょうね。もっとも北朝鮮の核に対するこだわりは強いので、最後の最後で米国のメッセージを読み違えるというシナリオのほうが可能性がありそうと思います。
Posted by カワセミ at 2005年09月25日 01:08
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