2005年07月01日

アフリカにおけるAIDSの悲劇

 この問題に関して触れること自体を避けたくなるような、重苦しい問題である。20世紀最大の悲劇はと聞かれて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか?二度の世界大戦?共産主義者による膨大な虐殺?もちろんそれらもあるだろう。しかし当事者の絶望感という意味では、アフリカ南部におけるAIDSの流行が最大のものではないだろうか。それは今も進行中である。
 率直に言うと、スーダンで起きている事態もそうであるが、アフリカとなると国際社会は途端に腰が重くなる。援助の効果が上がってないように感じられ、徒労感だけが募るからだろう。それでも欧米はマスコミ含めてそれなりの継続的な関心を有している。例えばワシントンポストではこのようにボツワナ関連の記事を掲載している(参照)ブッシュ政権を批判するのは容易いし確かに不充分ではあるが、しかし充分な援助自体は不可能なのだろう。
 アフリカ南部のそもそもの状況については日本人にはやや誤解があるかもしれない。南アフリカ共和国に隣接しているという事情もあり、モザンビークはともかく、ボツワナやジンバブエはそれなりに発展した社会である。ボツワナなどは少し前の時期なら中進国扱いでいいかもしれない。2001年時点でも一人当たりGNPは$3,000超になっている。ナミビアも$1,700前後である。ジンバブエは悪評高いムガベのせいもあり、近年は低迷しているが。そして1980年前後の段階で、このあたりの国は平均寿命は60歳強くらいにはなっていた。現在は40歳を切っている場合もある。
 その意味で、エイズの蔓延による絶望は、心理的には先進国でいうところの世界大戦のような突発的な転落というものに近いかもしれない。そこそこ文明的な生活を享受していたのが奈落の底に叩き落されたようなものだろう。アフリカ人の性意識など批判しても仕方が無いが、ありとあらゆる事が裏目に出た感もある。
 関連して、ブラジルのコピー薬の件。これはは有名だが、知らない人は少し以前の記事だが一応この付近を見るといいだろう。(参照)最近の動きとなると、ちょうど極東ブログさんがエントリを起こしたものがあるので参考になると思う。(参照)これに関する私の考えだが、緊急性と人道性が高いことを考えると、途上国相手にはコピー薬の類も黙認すべきだろうと思う。そして、恐らくOECD加盟国あたりが対象になるのだろうが、そういう先進国への還流を極力抑制して製薬会社に対する動機付けを維持する、というところが現実解だろうか。より質の高い治療薬を求める市場は充分に存在するであろうから成立するだろう。それ自体が不幸なことではあるが。
 そして、これも嫌な話ではあるが、AIDSへの本格的な取り組みが強化されるのは、近年爆発的な流行が懸念されているアジアで状況が深刻化してからだろう。アフリカではスルーされてしまうのが現実だ。神戸発として報じているこのニュース、アフリカの現状を見れば今さら言うまでも無いのだが・・・・・
posted by カワセミ at 23:27| Comment(3) | TrackBack(3) | サハラ以南アフリカ
この記事へのコメント
 旧宗主国の責任はどうなっていますか?アフリカの諸問題に関する、旧宗主国の責任はスルーしてとおれる話題ではないと思うのですが…
Posted by 罵愚 at 2005年07月02日 04:07
エイズについては中国でも深刻なようです。
2年前の朝鮮日報の社説で取り上げられてるところによると、2013年までに感染者が1000万人を突破するとか。
<a href="http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/12/01/20031201000107.html" rel="nofollow">http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2003/12/01/20031201000107.html</a>
Posted by Baatarism at 2005年07月02日 12:11
>罵愚さん
その件に関してはなかなか一概に言えるものではないです。ちなみに欧州自体は日本と比較してもまずまずの責任を果たしていると思います。ジンバブエに対するイギリスとか、アルジェリアやモロッコに対するフランスとか。もちろんうまくいかない面もありますが・・・・ただ欧州人の言う「植民地支配が悪いというが、独立して半世紀経って植民地時代より生活水準が下がるのは当事者の責任」はその通りでしょう。アフリカの専制政治による政府の言動は日本の近隣諸国と比較しても劣悪かもしれません。

それと、以前のこの付近のエントリにも少しは書きましたけども
<a href="http://kawa-kingfisher.cocolog-nifty.com/blog/2005/04/post_3.html" rel="nofollow">http://kawa-kingfisher.cocolog-nifty.com/blog/2005/04/post_3.html</a>
帝国主義といってもアフリカの場合沿岸部の一部を除いて期間的には19世紀後半の一部と比較的短いです。皮肉な言い方をすれば「欧州の植民地支配の期間が長かった地域ほど今日発展している」と言えなくもありません。これは日本も同じです。ただスペインに関しては悪かったと断じてもいいかもしれません。

また問題をAIDSに限定すれば、性意識の問題も大きいです。これはイスラム文化が強い地域では(少なくとも相対的には)まだ流行が少ないことからも理解可能です。

>Beatarismさん
中国のみならず、ロシアを含めたアジア全般に関しても懸念が高まっていますね。この付近の記事とかどうでしょう。ちょっと感覚が麻痺しそうですが・・・・
<a href="http://www.cfr.org/pub5028/nicholas_n_eberstadt/the_future_of_aids_grim_toll_in_russia_china_and_india.php" rel="nofollow">http://www.cfr.org/pub5028/nicholas_n_eberstadt/the_future_of_aids_grim_toll_in_russia_china_and_india.php</a>
Posted by カワセミ at 2005年07月03日 12:54
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