2005年05月31日

フランスの欧州憲法批准否決に思う

 フランスで欧州憲法批准が否決された。半ば予想されていた事とは言え欧州は大騒ぎである。とはいえ民意との乖離が大きくなってきていた昨今、少し前の日本の永田町だけの大騒ぎ的なシニカルな見方も出来るかもしれない。
 私が短期的な政治イベントに余り興味が無いせいもあるが、これ自体はとりわけどうという物でも無いと思っている。このEU統合プロセス、経済面の統合から始まり、政治面にも波及させる予定ではあるが、本質的にはやはり経済の側面、悪く言うと「食っていくための便法」であったことをもう少し冷静に考えなければならないだろう。ポーランドとウクライナの国境問題で悶着があった経緯だけでも、いつ何で躓くかは分からないにしてもどこかで停滞の時期があるという現実を予想するのは難しくは無かった。
 マクロ的に見ると本当にミもフタも無くなるので言うのも嫌なのだが、結局域内の相対的途上地域が人口比で一定以下の割合で、所得再分配のマイナスより潜在的成長余地による投資のプラスが大局的に見て上回るという判断が可能かどうかによるのではないか。そしてキリスト教の絆云々はレトリックに近いだろう。私に言わせれば中国の言う「同文同種」といい勝負ではないか。どっちかというと近親憎悪や同一宗教の派閥間のほうが始末に困るのが歴史の真実なのだから。トルコを排斥するような世論はバルカンあたりを本格的に叩き辛いある種の代償行為とは見れないだろうか。ちょっと言葉にはしにくいが、今回フランスが典型であるように貴族社会の残滓から来るような文化主義的な問題かと思う。
 とはいうものの、政治統合自体は長期で見れば進むと思う。少なくとも内政的には中央政府の権限が弱い連邦国家に近くはなるだろう。ただそれにはとても長い時間がかかるだろう。半世紀経過しても進むのは進んだが大した進歩ではなかったというオチかもしれない。それにこの種の地方分権が進んだ国をモデルにして考えた場合、中央政府のやるべき筆頭級の仕事は内政よりむしろ外交や安全保障である。現在の米国が典型であるが。そしてそんなものの統合はどうしたら進むのだろうか。19世紀的感覚なら一緒に固い同盟を結んで戦争することだろうが今はそうも行かない。むしろ、何か突発的なアクシデントの結果で瓦解するなり一気に統合が進むなりという結果のほうがありそうだ。それが何かは本当に分からないなとつくづく思う。
posted by カワセミ at 01:50| Comment(2) | TrackBack(1) | カナダ・欧州・ロシア
この記事へのコメント
確かハルバースタムだったと思いますが、ヨーロッパ列強に対しアメリカが海外植民地を持たなかった理由として、国内に植民地(南部の大プランテーション)を持ったことを挙げてました.拡大EUでヨーロッパ先進国は、過去のアジアアフリカの植民地とは異なる意味での、2重構造を抱えることになるのでしょうかねえ.まあ、そうなれば本当の意味(?)でのヨーロッパ合衆国になるのかもしれません.皮肉な意味でなくて.古来、二重構造を持たない連合体はありませんから.
Posted by M.N.生 at 2005年06月02日 10:43
19世紀後半の狭義の植民地主義なら、米国の政治思想上の問題でしょうが、それ以前ならそのような国内事情要因が大きいでしょうね。

東欧だけならともかく、中東・北アフリカへの対応がEUの試金石でしょう。ユーゴ紛争を完全に欧州内で解決できていれば、欧州人の意識はまた少し違ってきたのでしょうが・・・・・
Posted by カワセミ at 2005年06月03日 00:38
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Tracked: 2005-06-03 00:04