2005年04月29日

米下院の北京五輪中止決議案について

 中国政府が人権弾圧といった政策を止めなければ、2008年の北京オリンピックの開催を中止、開催地変更を国際オリンピック委員会に要求する決議案が米下院に提出されたとある。(参照)今までこの種の要求は時々米国議会では出てくる話でもあり、少し私の思うところをまとまりもなく書いてみたい。
 米国政治はとにかく議会の権限が強い。日本でのイメージと違って行政府の権限はそれほど強くなく、多くの内政の権限は各州にあり、連邦全体の内政には立法権のある議会に圧倒的な影響力がある。そして日本と違って各委員会の活動に権威がある。これは委員会内で閉じることによって国民から遊離していると米国内での批判も強いが、ただ社会や産業が高度化すると官僚任せになってしまうのは先進国共通の現象としてあり、それを抑制するには議会政治家の活動以外に本質的には無いことから止む無しと認められているようだ。ちなみに欧州での反EUも、各国の政治が決定してきたことをブリュッセルの官僚に預けてしまうことへの反発と理解するべきであろう。反民主主義という言い方は一定程度有効だ。
 話がそれた。で、この下院外交委員会であるが、米国ではこと外交に関しては上院外交委員会の権威が強い。しかし実際の外交に深く携わる人が多いせいか、中国に融和的との批判も強いようだ。この付近は日本の中国に融和的な議員と事情は大差ないかもしれない。もっとも日本のほうがずっと悪質で、日本の政治家が米中蜜月みたいなことを米国の政治家に話すと、事実としてその100倍は日中蜜月だったじゃないかというような切り返しが即座にあるようだが。
 この人権に関する懸念というのは日本の政治家が重視しないところで、駄目だなと思うのだが、米国国内では外国政府を評価するときの決定的な要因である。ここで米国国内の情勢としては、なかなか中国に影響力を発揮できない議会のフラストレーションを何らかの形で表明する方法を日々様々に模索しているということになるようだ。そして今回のトピックは、脱北者というよりは一人っ子政策に対する強制中絶を叩くネタとして持ってきたようで、米国内の中絶論争やナチスの過去などもあり、うまいポイントに目をつけたなと思う。これは米国内の理屈としては各議員は反対し辛い。この付近のページの書き方は参考になるだろう。もちろんそういうテーマのサイトだということを考えておく必要はあるが。(参照1参照2
 ちなみに先の速報ではタンクリド議員らと記載されているが、読んでの通りクリス・スミス議員も強力に推進しているようだ。彼は下院外交委員会のVice Chairmanであり、かなりの人物と目されてはいるようだ。両氏のページのリンクがあるページをリンクしておく。(参照)この法案の先行きは分からないが、総合的に見て米国内での影響力はそこそこあるのではないだろうか。
posted by カワセミ at 14:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 米国
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