2005年04月19日

弾道ミサイル防衛と日米協力

 先日の実験失敗もあって、ここの所やや静かなミサイル防衛問題であるが、もちろん推進中止というわけでも無く着実に進んでいる。成功しているイージス艦搭載型の比重が高まるかもしれない。端境期ではあるがちょっとコメントしておく。
 まず、米国におけるそもそもの経緯としては、少し古くなったがこれが良くまとまっている。(参照)この48州に対する楽観的な見方というのがミソで、アラスカとハワイの議員は当時相当怒ったらしい。でまぁ、だったらグァムはどうする、それなら近い日本も守って金と技術で協力してもらったら効率いいんじゃないのか、というのがごく自然な流れで出てきたというだけのようだ。変に米国からの圧力を言い募る人間がここでもいるようだが、さぞや先方は苦りきっていることだろう。別に断ってもいいのである。もっともそれがいいとも思えないが。
 これに対して、核武装して抑止を成立させることが本筋で、盾は必要ないんじゃないかという意見があるようだ。それはそれで一理ある。しかし、以前のエントリで安全保障における構図を説明したように、世の中は抑止の成立する相手ばかりではないのである。例えばアルカイダのような組織であればアメリカに反撃能力があろうがあるまいがミサイルが手に入れば撃つし、どう転んでも防御対策は必要というだけの話である。技術的困難さが大きくても、やれるだけのことはやらなければいけないという側面が強い。しかし日本の周辺は一見すると抑止が成立しそうな国であるために攻撃能力取得による抑止重視の判断に傾くかもしれない。ここでも日米の安全保障に関する意識の差が見えるし、潜在的な乖離要因ではある。
 そして指摘する人は案外少ないが、政治的効果というのがある。抑止が成立する国であれば、迎撃効果が少ない段階でも相手が恫喝が通用しないと断念し、政治的に穏健な主張にシフトする可能性がある。それと、防衛網で同盟国を統括することそれ自体が集団安全保障の枠組が機能していることをアピールできる。ここでは欧州のアジア諸国への外交的影響力が決して少なくは無い事も念頭に置かれているかもしれない。ただ仮に付いて来る国が無いとしても日米は推進するのだろう。
posted by カワセミ at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界情勢一般
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