2009年08月29日

近況と昨今の内外情勢に関する雑記(2009.08)

 昨年から眼病に悩まされ、最終的には網膜剥離で入院手術ということになってしまった。思っていたよりもかなり大変だった。評判の良い眼科ということもあり術後の経過は良いが、まだ何かと不便なのは否めない。とはいうものの、失明もせず生活も仕事も何とか継続できそうなので良しとするしかないだろう。追加で別の治療は考えないといけないかもしれないが。まぁ、そんなこんなで何とか生きている。

 すっかり世情にも疎くなったのでなかなか復活とはいかないが、せっかくなので様々なテーマに関するちょっとした所感でもメモして、久々の挨拶としておきたい。

衆院選:
 いよいよ明日が投票ということになった。今回は自民党が政権継続というわけにはいきそうもない。民主党も頼りない印象があるせいか世の中のフラストレーションは大きいようにも思える。しかし私としては、元々の期待が大きくないせいもあるが、今まで定期的な政権交代がなかった民主国家としては昨今の状況はまずまずなのではないかと思っている。もちろん真の論点は先送りにされ、数回の衆院選を経ないと意味のある論争は生まれないかとしれない。ただ30年くらいかかりそうなものが半分程度にまで縮められた印象はある。それはまだ見えにくいが良心的といえる少数派の議員、心ある官僚の努力の結果だろう。マスコミはもう一息で脱皮というところだろうか。紆余曲折は多いに違いないが。不安視されている外交・安全保障政策も、右派的政策は左派政権で実現が容易になるという性質を考えると、かなりの混乱を経た後に一定の成果は出せるかもしれない。歴史を振り返るなら、明治末期から大正期あたりの不安定な政党政治の時代がまた来るのかもしれない。その時とは異なり、今の日本人は議会政治の中にしか良い解は無いことを理解していると思う。

アフガン情勢:
 率直に言うと展望は悪いだろう。破綻国家が世界に悪影響を与えるのは事実なので全く関与しないというわけにはいかないが、投入コストは青天井になりかねない。コストを絞って封じ込めに舵を切る戦略が最も適切と思われるし、英国は以前からこの意見が強い。保守派の間ではコンセンサスが出来つつあると思うのだが、オバマ政権がどのあたりでバランスを取るつもりなのかはまだ見えてこない。失敗と評価されるにはまだ若干の余裕があるが、国内政治の帰趨によっては政治的資源が急速に失われかねない。医療保険改革がアフガン情勢に影響ありというのは筋違いに思うが事実だろう。しかし米国の現状を思うと、日本の健康保険制度は自国民があまり意識していなかった様々な要素によって支えられているということを実感する。

G2論:
 この種の言説に関して過剰に反応する必要はないと思う。過去は日本に関してもあったし、当面の成長エンジンに注目は集まりやすいものだ。ペッグ制の現実を考えるとG1論の変形の感もあるし多少の屈折も感じる。ただこの種のレトリックで持ち上げて国際的に有用な役割を中国に果たしてもらうというやり方はあるかもしれない。中国が貢献しやすい国際的な責務を民主国家で共同して考えてみるのは良い事だろう。例えば難民の受け入れなどは日本よりハードルが低そうだ。

新型インフルエンザ:
 ワクチン輸入に関して不用意な言及。正直ぞっとした。意味が分かって発言しているとは思えないが。今少し深刻な病状をもたらすウイルスであれば世界はどう報じたであろう。

核廃絶問題:
 この問題の本質を扱った論評が少ないと思う。つまり、この半世紀強という時間で、核技術を扱える国は潜在的に増加し続けてきたという事実を冷静に指摘しなければならない。1950-60年代あたりの、現在先進国といわれるような有力な工業国や地域大国の試みに
は、多くは米国が核の傘を提供するか、有効な安全保障上の関与を行うことで対処した。またこれは自発的に核開発を断念するに至った唯一のパターンであることにも注意する必要がある。そして、それらの米国の申し出に最終的に納得出来なかった国がインドなどのように核武装国となったわけだ。そして、パキスタンあたりを皮切りに、次の発展段階にあたるやや外交上の安定感に欠ける国々まで手を出せる段階に達したというのが21世紀初頭の現状というわけだ。リアリストの立場からこれに対処しようとしたら、核廃絶というようなテーマを挙げて時計の針を逆回転させようとするのは当然のことである。少なくともロシアをこれに納得させるのは充分可能と思われる。中国も現在の水準が高くないので微減程度で済むだろうし、核武装国の政治的資源は維持可能と踏めば協力は取り付けられる可能性がある。むしろ英仏あたりをどう扱うかがかなりの難題となる。
posted by カワセミ at 22:19| Comment(3) | TrackBack(2) | 世界情勢一般