少し以前からの話であるが、国内での報道も少ないのでメモを残しておきたい。ニジェールと関係諸国の状況である。
この国は元々フランスの旧植民地で縁も深い。そして経済的には世界の最貧国に近い水準であるのだが、近年の資源高騰の影響を受けて、世界有数の採掘量であるウラン鉱山開発が活況を呈している。また石油も産出するので世界の多くの資本の注目を集めている。
しかしこの種の開発が国内で対立を激化させることがあるのもまた良くある話である。ニジェールの場合は、ベルベル人の系統であるトゥアレグ(参考:Wikipedia)が関与する紛争がしばしば伝えられる。ニジェールにおける人口比としてはおよそ8-10%であるが、古来より勇猛さで知られているようだ。事態は深刻で、最近もウラン鉱山がゴーストタウンになるような事件も報道されている。(参照1)
このような背景があるため、外国企業がニジェールにおいて資源開発に参入するときに慎重に要する事がある。時間的には少し前になるが、フランスの大手原子力関連会社であるアレヴァ社とニジェール政府の間にトラブルがあった。(参照2)反乱軍を支援しているというのだ。しかし実際にトゥアレグなどが属する反政府勢力と一定の合意がない地域で採掘するのは難しいかもしれない。とはいうものの、結果としてニジェールにおける地位は後退した。サルコジ大統領もなだめにかかってはいるようだが。
この同国のウラン鉱山に関しては日本も参入しているが、中国の活動も活発なようだ。政府とは一定の合意があるものの、現地ではトラブルに巻き込まれており、最近もウラン鉱山が襲撃され労働者が連行される事件が発生している。(参照3)
またここで油断できないのはリビアかもしれない。近年は欧米との関係も急速に修復され、資源ビジネスが活況を呈している。フランスは原子力における協力のみならず多額の武器輸出契約も結んでいる。これを受けてかどうかは分からないが、隣国ニジェール量の資源埋蔵地域に関してリビア領であるとの主張を強めている。(参照4)フランスは当然旧植民地であるニジェールにも武器販売を続けているわけで、このあたりのやり口は大統領が誰になっても全く変わらないのがあの国らしいのかもしれない。むしろニジェールに対する意趣返しであるほうがまだしもすっきりするのだが、そんな米国のような考え方はしないようだ。
このような情勢下において、ダルフール問題に関連して隣国チャドへの平和維持軍派遣がフランス主導で進んでいる。(参照5)確かに米国が動けずアフリカ諸国が及び腰な現在は称賛すべき行動なのかもしれない。ただそれであれば周辺諸国に対する外交はもう少し慎重であっても良さそうだ。確かにこの問題で気を遣うとしたらむしろリビア側であることは認めるが。