2007年11月11日

ここ数か月の内外情勢に対する所感

 ちょっと今回はひどかった。少し前に仕事は落ち着いたがすっかりバテていた。書きたい事は色々あるが語りつくされている事が多いとも思った。それでも、ここしばらくのトピックに軽く所感を記すくらいの事はしようと思う。

・安倍首相辞任
 今年の前半は普通に出来の悪い首相という印象であったが、最後に至る経緯はあまりにも不可解な点が多いように感じた。以前にも似たような事を書いたが、内閣を支える立場の人間が、各人の地位において力を尽くす事に対するインセンティブは極めて薄かったと思う。もちろん高い地位にあるのだから私利を過度に要求せず公共のために働けという批判は為されて然るべきである。しかしそれにしても状況が悪すぎた。米国との関係は確かに良くなかったが、それでも国内の支持があればもう少し続いたであろう。

・北朝鮮外交
 現在の米国の方針は、このまま継続して成果を出すのが難しいものかもしれない。しかしこのブログでもしばしば書いているように、強硬策は同盟国の日韓双方が望んでいない。国内の報道ではしばしば中国に焦点が当てられるが、米国の外交的伝統では、それに配慮を欠くことは確かに無いものの、第一義的には同盟国の見解を尊重する。つまり、日本が集団的自衛権を容認し、韓国が南北朝鮮の統一とそれに関する負担を容認しないことには強硬策は推進できないのであろう。いわゆる米国のタカ派に属する人々もこの考え方自体は共有しているであろう。批判は主に今現在の脅威を(シリアにまつわる問題など)過小評価し過ぎるという面に集中している。いずれにせよ今年一杯くらいは現在の状態が継続するのではないか。中東でよほどの問題が発覚しない限り。

・大連立を巡る混乱
 この問題もややこしい。ただここまでの大技をかけようとするからには相応の理由があるのであろう。中曽根・小泉元首相の発言を考えると、私の想像であるが、日本の集団的自衛権の問題が米国との間でかなり切迫しているのではないか。つまりはこの問題を早期に解決するために憲法改正を急いだという事だ。(憲法解釈における福田首相の妙な発言は、「現行」憲法の解釈は譲ってもいい、という意味ではないだろうか)給油問題に関しては(もちろんそれなりに深刻な問題であるが)世間で言及されているほどの深刻さではないであろう。むしろミサイル防衛で米国向けの攻撃を防御できないなどという発言が課題なのであろう。当面は解釈改憲の動きが加速するかどうかで判断可能と思う。落とし所としては、切迫した同盟国への攻撃の場合には、議会への事後報告を義務付ける形で内閣総理大臣の指揮権を認めるというような形であろうか。
 念のために言及しておくが、これは成立するとしても短期間の政治的緊急避難に過ぎなかっただろう。巨大与党が成立しても早々に分裂したことは疑いない。日本は当面の不利益や混乱があってもどこかで政権交代の練習をしておかないといけないが、昨年から2008年の前半くらいはそのチャンスだったかもしれない。ただこの状況ではもうそれは望めないだろう。次の機会はいつであろうか。また10年以上かかるのだろうか。

・イラク情勢とトルコ
 以前から、イラクを地域で分割するのは悪い解決策だと言われてきた。それはここ数年の真実であったろう。しかし残念ながら、自発的移動も含めた形で住民の住み分けはかなり進行してしまった。課題は首都バグダッドであったがそれも機能が低下して弱い行政機能しかもたなくなった。そのため米国としては、コソボに近いアプローチを模索している可能性がある。トルコの真意はこれに対する反発ではないかと思う。クルド地域に安全保障上の問題を抱えているトルコの事情を考えると無理もない。しかし所詮は他国の領土であるという事を少々軽く見ている感があり、米国の外交次第では危険が残っているように思われる。米国は国家の分裂を「民主的」と考える傾向があるのでクルド地域の独立も認めかねないが、現状では危険ではないだろうか。地方政府に大きく権限を委譲した連邦制の維持が現実解なのであろう。

・ミャンマー情勢
 これは事態が動きそうにない。結局のところ日本の対ミャンマー外交は結果を出さなかったと言えるのではないだろうか。中途半端に専制政治に理解を示すのは、一時の便法という割り切りがある時に限るべきだ。さもなければ不測の事態の時に的確な対応が取れない。こうなってはもう選択肢は自ずと決まってしまうわけだが、また「日本人が犠牲になって初めて動く」という批判が発生するのであろう。普段から声高に人権問題を取り上げるのは、今の日本の国際的立場では「結果として」外交的選択肢を増やし、国益にも資すると判断できると思うがどうだろうか。1989年の天安門で日本はそれを学ぶべきだったのだが。

・2008年米大統領選
 これは、現在知名度が少なく伸びしろがあると思われる人物が重要になるだろう。具体的には共和党のロムニー氏がどうかということになる。オバマ氏も実績不足を突かれて最近はやや支持が落ちているが、この長きに渡る過酷な選挙戦はそのまま「実績」を作るという側面もある。いずれにせよ来年初頭〜春にかなり数字が動くはずである。本選ではどちらかの候補がよほどのミスをしない限り接戦であろう。個人的にはロムニーvsオバマの選挙が面白そうと思うがそうとも限らない。なおヒラリー・クリントンの対日政策を懸念する声もあるが、どのような大統領でも結局は日本次第だと腹をくくっておくべきだろう。

・北東・北西航路
 ちょっと興味が湧いたので少し調べたが、経済に影響を与えるようになるのはかなり先の話のようだ。現在は話題先行であろう。ただそれはそれとして、日本は港湾の管理・運営を徹底して改革すべきである。これが政治的課題にならない風土は問題であろう。

 定期的なエントリ更新といきたいものであるが、例によって停滞するかもしれない。なお一貫してアクセス数は4000前後で一定していた。申し訳ない限り。
posted by カワセミ at 20:57| Comment(3) | TrackBack(1) | 世界情勢一般